【池原照雄の単眼複眼】危機の芽を摘み取るトヨタの米国生産再編

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84年の現地生産以来で初の調整

6月下旬から海外事業も担当することになったトヨタ自動車の豊田章男副社長には、いきなりの厳しい経営判断となった。テキサス工場など米国での一部操業停止や生産車種再編の決定である。

1984年に合弁会社NUMMI(カリフォルニア州)で米国生産を開始して以来、初の大掛かりな生産調整を迫られた。ただ、需要動向に応じた減産や工場間の車種移動は国内では普通のことだ。北米の生産活動も日本並みに熟成してきたと見ることができる。また、危機の芽は早期に摘み取るという決断も速かった。

トヨタの米国新車販売は昨年12月から7か月続けて前年同月実績を下回っている(営業日数調整後、以下同)。ピックアップトラックやSUVなどライトトラック系の販売が月を追うごとに落ち込んでおり、「フルライン」で事業展開しているトヨタも影響のラチ外とはいかない。

6月はトヨタブランドの乗用車が同月として過去最高になったものの、ライトトラックは3割強落ち込み、レクサスを含む総販売台数は12%の減少となった。

◆台数減だが中身は健全

トヨタ首脳は「年初に比べると、現地は様変わりに慎重になっている」という。ただ、乗用車では『プリウス』『カローラ』など供給が間に合わないモデルも少なくなく、ライトトラックでは無理なインセンティブ拡大策は取っていない。GM(ゼネラルモーターズ)など米メーカーに比べると商売の中身は健全だとも、この首脳は指摘する。

今回の生産車種再編で、2010年後半に稼動予定のミシシッピ工場ではSUVの『ハイランダー』に換えて、『プリウス』をもっていくことにした。米国では早晩、プリウスの生産が必要であり、トヨタは工場の検討を進めていたが、サラ地での生産となる。

◆北米でも「右肩上がり」見直す好機が

将来は『カムリハイブリッド』(ケンタッキー工場)を含み、ハイブリッド車(HV)の増産が必至なだけに、HVを集中生産できる専用拠点はむしろ必要だったといえる。

トヨタは07年にカナダを含む北米工場で約164万台を生産(委託分含む)した。今回の生産休止によって「過剰能力」を懸念する向きもあるが、決してそうしたレベルではない。

米国販売に占める北米生産車の比率は、55%水準にとどまっている。「需要のあるところで生産する」という海外展開の基本方針からすれば、北米ではなお新工場を含む追加投資が必要である。

その過程では、生産休止や機種再編が必要な局面も出てこよう。今回は、北米でもまさに「右肩上がりの体質を見直す好機」(渡辺捷昭社長)が訪れたということだ。

《池原照雄》

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