【池原照雄の単眼複眼】17年ぶりに一斉値上げ トラックが迎える正念場

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日野、日デとも3%前後の値上げ

大幅な原材料費の上昇分をどう車両価格に反映させるかが注目されるなか、トラックメーカーが1日からの値上げに踏み切った。トラック・バスの一斉値上げは1991年以来17年ぶりであり、原材料費がいかにイレギュラーな状態になっているかがうかがえる。生産財であるトラックの値上げ浸透は難しく、業界4社の正念場はむしろこれからだ。

国内市場で普通トラック(中大型トラック)最大手の日野自動車は、1日から小型を含むトラックおよびバスの一斉値上げに踏み切った。希望小売価格ベースの平均改定率は大型トラックが2.5%(35万円)、中型トラックが3.0%(18万円)など。

日産ディーゼル工業も同日から大型で2.4%、中型で3.4%と、日野とほぼ同じ幅の値上げを実施した。両社とも「原価低減努力の限界」を値上げの理由に挙げており、いすゞ自動車と三菱ふそうトラック・バスも追随が必至だ。

◆原材料費の更なる上昇や海外市場の不振も

トラック業界の一斉値上げは、1991年以来。この時は原材料費の上昇とともにエアバッグなど安全対策装備の充実も背景にあったが、今回は鋼材や樹脂など原材料費のすさまじい上昇がすべてだ。

日野の場合、今年度初めに2009年3月期の営業利益の減益要因として原材料費の高騰に起因するものを160億円と見積もっていた。1日からの値上げにより半分の「80億円程度はカバーできる」(広報渉外室)という。

一方で一層の原価低減活動を進めるものの、原材料の追加的な上昇や海外市場の低迷といった要因も浮上してきたため、営業利益予想は据え置いている。値上げによって、何とか期首予想の利益を確保したいという筋書きだ。

◆再編・体質強化した販社の真価が…

もっとも、国内4社が激しい販売競争を演じるトラック業界での価格転嫁は容易ではない。最終顧客である運送業界も、燃料費の高騰によって体力を消耗しているから一層難しい。

間に入る販売会社は、板ばさみ状態に陥りそうだ。2000年当時のトラック不況を経て、メーカー各社は販社の再編や直間比率の改善など体質強化策を講じてきたが、今回の値上げでその真価が問われることにもなる。

販社の大半はメーカーの連結対象子会社であり、収益面でシワ寄せが行けば、自分の業績にもはね帰ってくる。

ここは製・販が一体となって価格転嫁を浸透させる地道な努力を続けるしかない。よもや、値上げの混乱に乗じ、安売りでシェア拡大に走るメーカーは出ないと思うのだが……。

《池原照雄》

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