【池原照雄の単眼複眼】ホンダ『カブ』シリーズが発売50周年に

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2輪→4輪進出という事業モデルの原型

ホンダがバイクメーカーとして飛躍する一大転機となった『スーパーカブ』が8月に発売50年を迎える。最近でもシリーズでは世界で年500万台近くが売れており、今年4月には累計生産が6000万台を突破した。

「まず2輪車で進出して事業基盤を築き、その後の4輪車進出につなげる」(福井威夫社長)というホンダの事業展開パターンの原型を、半世紀前に築いた「功労車」でもある。

最近、ホンダ本社で1958年に発売された初代のスーパーカブと最新モデルが並べられているのを見たが、両方とも今のモデルですかとホンダの人に聞いてしまった。それだけ、初代の完成度が高く、かつそのコンセンプトを守り続けてきたということだ。

◆蕎麦の出前に片手運転できるクラッチを

排気量50ccの量産バイクとしては当時では異例の4サイクルエンジンを搭載、静粛性と燃費性能を両立させた。片足を上げずに乗れるフレーム構造や、前輪のフェンダーと風よけなどに初代から採用したプラスチック部品も国産バイクでは最初だった。

当初のプラスチックは、当時、ポリバケツにも採用され始めていたポリエチレン。軽量化による燃費性能の向上にも大きく貢献した。

また、本田宗一郎氏が「蕎麦屋の兄ちゃんが片手で運転できるように」とこだわったことから、足で操作できる「自動遠心クラッチ」も開発した。片手運転を推奨するような製品は現在では無理だが、そういう時代でもあった。

ただ、その後半世紀も原型が保たれるスーパーカブがいきなり誕生したわけではない。熊など猛獣の子を意味する「カブ=Cub」を最初に冠したのは52年に発売した補助エンジン搭載自転車の『カブF型』だった。

◆名品は一夜にして完成せず

自動遠心クラッチの原形は、49年に発売した最初のバイクである『ドリームD型』に採用するも使い勝手は不評だった「コーンクラッチ機構」だった。原付実用車としては53年に『ベンリイJ型』(「便利」がネーミングの由来)を投入しているが、これも当初はエンジンなどのトラブル続きだった。

そうした、失敗の積み重ねでスーパーカブは生まれたのだ。半世紀もベストセラーを続ける名品が一夜にしてできるわけもない。

発売の前年に完成したモックアップを見た藤澤武夫氏(元副社長)は、国内の総需要が月4万台の時代に、3万台は行けると言って周囲を驚かせたが、3年目には予言通りになった。

スーパーカブがもたらす収益は4輪開発に投じられ、発売5年後の63年にホンダは軽トラック『T360』とスポーツカー『S500』を発売し、自動車メーカーとなった。2輪で始めて4輪へ---という今は当たり前の同社の事業モデルの原点だ。

「原油高などを踏まえると世界的に2輪車が見直される可能性が高い」(福井社長)と見る2輪事業は、今後もホンダの成長力の基盤となろう。

《池原照雄》

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