【神尾寿のアンプラグド特別編】屋根があってもGPSナビ!? 大阪で実証実験

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屋外のGPS受信情報を屋内アンテナで再送信

GPS携帯電話のナビ機能は、屋内では使えない---。そんな常識を覆す実験が、大阪で行われた。

総務省近畿総合通信局は2月1日から14日まで、大阪の阪急三番街で、地下街でGPSを利用する実証実験「みて!ふれて!つかおう!ユビキタス体験in阪急三番街」を実施。屋内という環境下において、GPS携帯電話によるナビゲーションや、ワンセグを使った局所的な情報配信、非接触IC FeliCaを用いた交通系ICカード「PiTaPa」(スルッとKANSAI)・「ICOCA」(JR西日本)を使った経路ナビサービスなどの実験を行った。

周知のとおり、GPSナビゲーションは高度2万kmを周回するGPS衛星の信号を端末で受信して、現在地を割り出している。そのため車速や自立センサーによる測位が可能な車載ナビを除けば、GPS衛星が見通せない屋内でのGPS測位は不可能であった。

どうやって屋根のある場所でGPS測位をするのか。大阪の実証実験で用いられたのが、建物の屋上に設置したGPSアンテナで受けた信号をそのまま屋内の小型アンテナで出力する「GPS再送信システム」だ。

具体的には、屋外に12基のGPS受信アンテナを設置。その信号を阪急三番街地下2回の25基の屋内小型アンテナで再送信している。屋外アンテナに比較して屋内アンテナの数が多いのは、屋内という閉鎖された空間で、しかも小出力でGPS信号を再送信するため、ひとつの屋外アンテナで受けた信号を、2つの屋内アンテナで再送信しているためだ。

むろん、屋内で携帯ナビゲーションをするには、GPS信号を再送信するだけではダメだ。建物内の地図がいる。そこで今回の実験に際し、ナビゲーションサービス最大手のナビタイムが協力。阪急三番街地下街の地図が特別に用意された。

なお、今回の実験システムでは「屋外」「屋内」といった判別はしていない。つまり、屋外で測位しても位置情報が実験の建物内と重なれば、地下街にいると地図上では表示される。「屋外・屋内のどこにいるかという、3次元的な位置の測位までは今回の実験で想定していない」(説明員)という

◆測位精度・ナビともに「屋外と同じ」にはならず

では、実際の屋内GPSナビゲーションのできばえはどうだったのか。

結論から先に言えば、屋外でGPS携帯ナビを使うほどの精度では、測位やルート案内ができなかったというのが現実だ。今回、筆者はauの「EZナビゲーション」でテストをしたのだが、地下街の場所によっては大きな測位誤差が生じるケースが見られた。逆にうまくいけば、それなりに正確な自位置表示が行われるのだが、誤差の大きいゾーンとの精度のばらつきは否めない。

「(屋内ナビは)屋外のGPSアンテナの受信環境に左右されます。今回の実験でも一部のゾーンでは(屋外アンテナが)建物の影の影響で、やや精度が悪い」(説明員)

さらにGPS携帯のナビゲーションでは、自分の位置が“スムーズに動かない”という課題が見受けられた。自分の位置がスムーズに動くのではなく、ポイントからポイントに"ワープするかのように"一気に動いてしまうのだ。

スムーズなルート案内ができないのは、屋内アンテナの設置に問題がある。今回の実験では1つの屋外アンテナで受信した信号を、屋内では2つのアンテナで再送信している。さらに屋内アンテナの出力が弱いので、隣り合った屋内アンテナからの信号の強弱で位置を割り出す仕組みにはなっていない。そのため屋内で「Aという屋外アンテナ配下から、Bという屋外アンテナの配下に移ると、自位置が一気に移動してしまう」のだ。

今回はあくまで実験という位置づけであるが、今後、屋内におけるGPSナビを実用化するには、屋内アンテナに「建物の階層情報」と「屋内アンテナのら設置位置情報」を加えた屋内ナビ向けの位置補正システムが必要になりそうだ。

◆ワンセグ情報配信とICカードによるルート案内

一方、屋内GPSナビ以外では、普及が進む「ワンセグ」と「交通系ICカード」を応用したサービス実験が行われていた。

まず、ワンセグの活用を見てみよう。今回の実験では、通常の放送波が届かない地下街において、小出力・小型の送信機を使った店舗の広告情報をワンセグで流すというデモンストレーションが行われていた。地下街の複数の店舗に小型の送信機を設置し、“その店舗から半径1m程度”の範囲内でのみ、お店のプロモーション映像が受信できるというものだ。

「ワンセグは放送波なので利用には事業免許が必要ですが、これだけ小出力だと免許なしで利用できます。携帯電話の標準機能となったワンセグを使うことで、今あるケータイが映像配信の受信機として使えるのがポイントですね」(説明員)

さらにワンセグを使えば、ユーザーにパケット料金負担を強いることなく、映像コンテンツを配信できる。また、かなり狭い範囲でしか受信できないので、スポット広告的な使い方も可能だ。利用時にチャンネルあわせが必要になるといった課題はあるが、ワンセグの新たな活用方法としてユニークだ。

次に「交通系ICカード(PiTaPa / ICOCA)」を使った経路ナビサービスだが、これは地下街各所に設置された情報キオスク端末でお店を探し、画面上に経路を表示するというもの。ポイントは経路案内時にPiTaPa / ICOCAをかざすことで「利用者ID」を保存し、いちど店舗検索をすると、地下街にある別のキオスク端末にカードをかざしたときも、先に検索した店舗までの経路が表示されるというところだ。さらに店舗の検索履歴も保存されるため、同じカードで何度もキオスク端末を使うと、その人の好みに応じた店舗をリコメンドするようになる。

GPSナビのように手元で誘導してくれるわけではないが、“カードをかざすだけ”でユーザーごとに最適な情報を表示する仕組みは使いやすい。機能を発展させれば、地下街や大規模ショッピングセンターの案内板代わりのシステムとして使えそうだった。

今回の阪急三番街での実証実験は、産官学で取り組まれている大規模な都市再開発計画「大阪駅北プロジェクト」における歩行者ナビゲーションシステムの開発を目指したものだ。このプロジェクトでは、大阪駅直近の24ヘクタールに職・住・商の複合型施設が作られる予定であり、特にショッピングゾーンでは歩行者の案内・誘導システムが重要になるという。

この大阪駅北プロジェクトに限らず、最近は大型化・高層化をした多目的ビルや大規模駅施設、郊外の大きなショッピングセンターが増えている。これらの商業施設では、来訪者の経路案内サービスが顧客満足度の向上で重要である。さらに屋内での店舗検索やルート案内サービスは、位置情報広告や店舗誘導によるリアルアフィリエイトビジネスに展開する可能性がある。実際、先述のナビタイムでは、すでに大型商業施設の「屋内デジタル地図」の制作に注力しており、屋内ナビゲーション時代に向けた準備が進んでいる。

屋外だけでなく屋内も携帯でナビゲーションが可能になることで、カーナビとGPS携帯電話やFeliCa活用サービスが連携する可能性が今後さらに拡大するだろう。携帯電話を使った屋内ナビゲーションの世界は、クルマとの連携においても注目である。

《神尾寿》

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