【池原照雄の単眼複眼】最先端シミュレーターでハンドルを握る

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◆8台のプロジェクターによるリアルな映像

直径7メートルほどの巨大クラゲがテニスコートがすっぽり収まるスペースの中で、身をくねらせながら泳ぎ回る。トヨタ自動車が東富士研究所内に完成させた世界最高レベルの性能をもつ「ドライビングシミュレーター」は、こんなイメージだ。内外の報道関係者が参加した取材会で、筆者は幸運にも競争率12倍の抽選に当たってハンドルを握る機会を得た。

シミュレーターの新設は、限りなく実走行に近い運転環境を作り、実車走行では危険が伴う居眠りや飲酒状態といった特定条件などでの運転特性を解析、予防安全技術の開発強化につなげる狙いだ。

クラゲの体内、つまりドーム内には360度の球面スクリーンが設置され、8台のプロジェクターからCG制作による画像が映し出される。運転席からはドアミラーにも走行に応じた画像が忠実に映し出されるようになっている。


◆右折時に直進バイクと衝突

映像ソフトの再現性もさることながら、効果音も含めた加減速やカーブ時のフィーリングは実走行に極めて近い。そうした体感の再現は、最大0.5Gの加速度性能や最大25度までドームを傾斜させることなどで実現している。

ドーム内に設置された車両は、現時点で最高の安全装置を装備したレクサス『LS460』だが、他の車両に置き換えることも可能。さて、エンジンを始動させ、研究所に隣接する御殿場の市街地をドライブした。後部座席の担当者の指示に従って先に進む。

事故発生が最も多い交差点での挙動を把握するため、筆者のドライブコースでも交差点を4度通過した。左折時は車両の左後方から横断歩道上に歩行者が現れたりする。右折時には同じ右折待ちの対向車の陰からバイクが直進してきた。よくある事故のパターンである。やや緊張していた筆者は、このバイクを見落として右折。後で担当者に聞くと、衝突と「認定」された。

誤解されやすいので付け加えるが、このシミュレーターは他の車や人などとの衝突時の衝撃までは再現されない。そこを再現すると命はいくらあっても足りないし、衝撃のシミュレーターではないわけだから。


◆予防安全システムの開発期間短縮に威力

約5分のドライブはあっという間に終わった。走行感覚のリアルさを最も体感できたのは途中の下り坂で、あえて強めのブレーキをかけた時。つんのめり感が見事に再現された。もっとも、映像面ではまだ改良の余地ありと感じた。とくに急加速時の映像は、やや幻惑感があるし、遠方に見える信号のカラーが薄く、景色に埋没して識別しづらい。

こうした指摘に対し、開発の指揮を執る小林信雄常務役員はうなずきながら「まだまだ改善を重ねたい」と語った。ソフトについても、御殿場市街版(総延長64km)に加え、居眠り運転が起きやすい高速道路などを順次制作していくという。

開発部門担当の岡本一雄副社長は、シミュレーターでの研究成果を具体的な予防安全システムに反映させるには「3-4年くらいかかる」との見通しを示した。シミュレーターは、ドライバーの運転特性を解析するだけでなく、その知見を基に開発する安全システムの動作確認(検証)にも使える。

開発期間の短縮に威力を発揮するわけで、渡辺捷昭社長が究極の安全技術として、よく引き合いに出す「事故を起こさないクルマ」へのアプローチを速めることができる。そう考えると、50億円前後と見られるこのクラゲのコストは、そう高いものではない。
《池原照雄》

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