土地神話でバブル膨張
急拡大した過程は、まさに「バブル」そのもの。ここ数年、アメリカは住宅投資ブームに沸いてきた結果、金融機関同士の貸し出し競争が激化し、金額が大きくリスクも高い住宅ローンの分野でも、信用履歴が低くい人に高金利でローンを組ませることでサブプライムローンが急増した。
この急成長の背景にあったのは、住宅価格は値上がりし続けるという「土地神話」だった。特に、2004年第3四半期から2006年第2四半期まで、全米平均の住宅価格は前年同期比2ケタ台の上昇を続けた。サブプライムの利用者には、値上がりを期待した転売目的の住宅購入者や、値上がりした自宅を担保に新たなローンを借りて、消費などに使ったケースも少なくない。
こうした無謀な借入、貸し出しが可能だったのも、住宅価格が値上がりし続けていたから。サブプライムは、当初の金利は年5−6%と低いが、数年後に10%を超える高金利となる商品設計が一般的。住宅の購入後に値上がりすれば、担保価値が高まり、サブプライムより金利の低い「プライムローン」に借り換えすることができる。
ところが、米金融当局が金融の引き締めに転じて金利が上昇したことから、住宅価格の上昇に急ブレーキがかかった。2006年10−12月期は5.9%の上昇にとどまり、都市によってはマイナスに転じた。
いったん住宅価格が下落すると借り手は金利を支払うこともままならなくなり、「自転車操業」は成立しなくなる。下落に歯止めがかかれば金融機関は担保の住宅を処分することで損失をカバーできるが、さらに住宅価格の下落が続くと不良債権化してしまう可能性が出てくる。
こうして、高金利に切り替わる前にプライムへの移行をもくろんでいた利用者が借り換え出来ず、返済に行き詰まるケースが続出した。2005年半ばまで10%台だったサブプライムの延滞率が、06年10−12月期には13.3%に上昇している。
ローンの焦げ付きが増えたことで、06年12月以降、サブプライムを専門に手がけていた中小ローン会社約20社が経営破たん。そして、3月13日には取引銀行から融資打ち切りを通告された全米第2位のニューセンチュリー・フィナンシャルが経営破綻の可能性を理由に、ニューヨーク証券取引所の上場廃止に追い込まれた。
ニュー・センチュリーの破綻で、流れが一変。住宅市場の好調は米好景気の象徴でもあったため、一気に景気減速に対する懸念が高まったのだ。