【神尾寿のアンプラグド特別編】車の中でも高速通信 クアルコムの Rev.B と UMB

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【神尾寿のアンプラグド特別編】車の中でも高速通信 クアルコムの Rev.B と UMB
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◆日本でも導入可能? 高速データ通信Rev.B

6月20日、米QUALCOMM(クアルコム)が北米サンディエゴにおいて最新の通信技術「EV-DO Rev.B」と「UMB」の技術デモンストレーションを行った。

クアルコムは第3世代携帯電話をはじめとするモバイル通信関連の基本特許を多く持ち、日本でもKDDI(au)の携帯電話「CDMA 1X WIN」がクアルコムの技術とチップセットを全面的に採用している。モバイル通信分野の研究開発力や影響力では、世界的に見てもトップクラスの企業だ。

今回のアンプラグドは特別編として、アメリカで行われたクアルコムの技術デモンストレーションの模様をお届けする。

今回の技術デモンストレーションでは、「Rev.B」と「UMB」という2つの通信技術が公開された。両者はベース技術的には異なる系譜となるものであり、前者は“現行3G技術の進化系”、後者は“新たな高速モバイル通信技術”になる。クアルコムでは、最終的にはこのふたつが連携・補完しながら市場に普及すると考えているが、実用化のタイミングやマイルストーンは異なる。

まずはRev.Bから見てみよう。

Rev.Bはクアルコムが推す3G通信方式「CDMA2000 EV-DO」の最新版だ。同方式は、日本ではKDDIの携帯電話ブランドであるauが採用しており、現在は多くの端末が「Rev.0」(通信速度:下り最大2.4Mbps/上り最大144kbps)と呼ばれるバージョンを採用し、一部端末が最新バージョンの「Rev.A」(通信速度:3.1Mbps/上り最大1.8Mbps)に対応している状況だ。今回、公開されたRev.Bは、このRev.Aの後継になるものである。

Rev.Bの特徴は、これまで1波しか使っていなかった電波(キャリア)を複数束ねて使えること。もともとCDMA2000系の通信方式は、使用する電波が1波あたり1.25MHzと小さかったが、これを束ねることで高速化を実現する。また複数波を束ねて使うことは、トラフィック(通信需要)を分散させられるメリットがあり、レスポンス向上にも繋がるという。

今回のデモでは、Rev.Bを3波(3.75MHz+ガードバンド)使用したパターンで実験が行われた。この条件だと、ドコモやソフトバンクモバイルが採用する3G通信方式「W-CDMA」と同じ5MHz幅になり、W-CDMAの高速データ通信方式「HSDPA」"同じ土俵"になる。そこでRev.Bの技術優位性を見せるデモンストレーションだ。

Rev.Bの3波使用の結果は、通信速度で下り最大9.3Mbps/上り最大5.2Mbps。実際にクルマの中で行われたデモでも、HD動画再生と大容量データファイルのダウンロードを同時に実行するなど、優れたパフォーマンスを見せた。さらに通信環境に応じて、3波と1波のモード切替もスムーズに行われた。Rev.Bは用途別に通信速度を自動調整する「QoS」と呼ばれる機能を搭載しているので、通信環境が悪化してスピードが落ちた場合には、自動的に音声通信(VoIP)や動画再生の通信を優先する。データ通信効率が高く、高速移動中の利用にも適している。さらに上りの通信速度が速いのも特徴だ。

例えば、Rev.Bのクルマでの利用をイメージしてみると、容量の大きい高精細地図や衛星写真の配信はもちろん、クルマ側のセンサーやカメラのデータをセンターに送信することも可能になりそうだ。

ちなみにW-CDMAの高速化規格「HSDPA」は5MHz幅で下り最大3.6Mbps/上り最大384kbps。その後の高速化で下り最大7.2Mbpsが計画されている。Rev.Bは、これらW-CDMAの高速化技術に対しても、十分な競争力を持つ。

さらにRev.Bの特徴は、現在KDDIが整備している「EV-DO Rev.A」からスムーズな移行が可能なことだろう。基地局側はRev.A用設備(CSM6800)のソフトウェアアップグレードで対応可能であり、これは今年3月にすでにリリースされているという。端末側には新たなチップセット「MSM7850」が必要であるが、こちらも今年の第三四半期にサンプル出荷される予定だ。KDDIの経営判断の次第によっては、早いタイミングで日本にも導入される可能性がある。


◆モバイルWiMAXより高性能な「UMB」

今回、公開されたもうひとつの高速通信技術「UMB」は、地上デジタル放送や無線LANで使われているOFDM(直交周波数分割多重)方式をベースにしたものだ。そのため3G携帯電話が使うCDMA方式とは異なる技術になる。

UMBの特徴は、CDMA系以上の高速データ通信で、20MHzの帯域幅を利用した場合で、下り288Mbps、上り75Mbpsという家庭用光ファイバーサービス(FTTH)並のスピードを実現する。通信遅延が16ミリ秒以下と小さく、QoSで用途別に優先順位をつけた通信利用も可能。MIMO、SDMA、指向性ビーム形成など、最新のワイヤレス技術がつぎ込まれているのも特徴だ。また、各国の無線周波数の割り当てを考慮し、UMBの規格では1.25MHzの帯域幅からの利用できるほか、対応周波数帯も450MHz−3.9GHzと幅広く設定されている。

UMBのライバルは、日本でも話題になっている「モバイルWiMAX」だ。同技術は固定向け無線通信方式であったWiMAXを移動中でも使えるように拡張したもので、日本ではアッカ・ネットワークスやKDDI、イー・アクセス、ソフトバンクモバイルなどがモバイルWiMAXの採用に意欲を見せている。しかし、クアルコムはモバイルWiMAXについて、「モバイル環境での性能が十分ではない」と厳しい見方をしている。

「モバイルWiMAXは固定環境向けの技術(WiMAX)をベースにしているので、モバイル環境で重要な基地局の収容数の最適化や、移動中のハンドオーバー(基地局切り替え)処理の性能が厳しい。それらの性能について、明確な回答も得られていない」(クアルコム Investor and Industry Director  Pete Lancia)

一方、UMBは当初から“モバイル環境”の利用を前提に作られた技術であり、モバイルWiMAXよりも優位性があるというのがクアルコムの主張だ。また、クルマや鉄道など高速移動環境下での利用も想定されているという。

UMBのデモは、移動するクルマの中で、ノートPCによるインターネット利用(ブラウザおよび大容量データのダウンロード)、HDサイズの動画のリアルタイムストリーミング、高画質テレビ電話などのアプリケーションを同時利用するというもの。デモ走行中には基地局のハンドオーバーや、通信負荷をわざと高めて利用する実験も行われたが、もともとの通信速度が速く、QoSが効果的に働くことで、テレビ電話やHD動画再生などのクオリティが落ちることはなかった。

今回のデモンストレーションは時速60Km程度の速度で行われたが、クアルコム側の実験では「アメリカの法定速度が許す範囲でのテストでは、移動速度がUMBの性能に与える影響はほとんどない」(説明員)という。UMBの前進であるFLASH-OFDM(Pre UMB)は、独Deutsche Bahnの高速鉄道ICE向けのモバイルブロードバンドサービスとして商用提供されており、ここでは250−300km/hで運用されている。UMBの高速移動環境での通信性能は、かなり期待できそうだ。


◆EV-DO Rev.B/UMBともに商用化のリアリティは高い

UMBは新たな高速通信方式であることから、今のところ日本導入の目処は立っていない。しかし、クアルコムジャパンは昨年10月、東北大学と宮城県、ソフトバンクテレコム、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)などと宮城県仙台市内でFLASH-OFDMの実証実験を実施。UMBについても、今後、日本導入に向けて各方面に働きかけていきたいという。

クアルコムの技術開発の特徴は、技術的な合理性や優位性だけでなく、「経済合理性」や「市場適合性」を重視することだ。Rev.BやUMBは、"これから"登場する技術だが、すでに製品ロードマップやコスト試算がしっかりされているなど、公開デモを見た限りでも、商用化のリアリティはかなり高い。今後、クルマは様々なモバイル通信インフラを活用していくことになる。新たな高速データ通信技術の動向は、注目しておいて損はないだろう。
《神尾寿》

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