【伊東大厚のトラフィック計量学】路上駐車と渋滞 その3

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駐車スペース整備の必要性

前回まで、路上駐車の取締りに注目し、効果を検証してきた。今回の取締り強化が、ドライバーに受け入れられたのは、コインパーキングをはじめ、駐停車スペースの供給量が増えたことが背景にある。

しかし、厳格な取締りに問題がないわけではない。集配中の一時停車が違反となり、配送事業者が困っている、との報道もあった。集配は荷物の搬入・搬出を伴うため、すぐ近くに駐停車スペースが必要であるが、まだまだ不足している。

取締り強化をきっかけに、集配車を対象から外す、荷捌きスペースを整備する、共同配送で集配回数を減らすなど、対応策も協議されはじめた。規制や取締りは、いわば“ムチ”対策だ。路上駐車を減らすには、規制・取締り強化だけでは、充分とはいえない。駐停車スペースの整備など、供給側の対策も並行して進める必要がある。

◆スムーズ東京21

東京都では、今回の取締り強化以前に、道路インフラの改良を中心とした路上駐車対策「スムーズ東京21」を実施してきた(図1)。東京周辺にお住まいの方は、交差点で、赤色にギラギラ光る舗装を見かけたことがあるだろう。交差点近くの路上駐車は、渋滞への悪影響が大きい。赤色舗装は、“交差点近くは駐車厳禁”を視覚的に訴える効果がある。

特徴的なのは、駐停車スペース整備の際、歩道の一部を切り欠いて荷捌きスペースを作り出すなど、工夫している点だ。こうした改良は、都の予算書から計算すると、1交差点あたり1億円程度で済むようだ。1カ所1億円は、インフラ整備費用としては、かなり安上りなほうだ。

◆インフラ対策の効果は?

スムーズ東京21は、本格実施の前に、靖国通りで社会実験を行った。赤色舗装、交通指導員による呼びかけ、荷捌きスペース設置などを行った結果、路上駐車と渋滞が減り、旅行速度は、12km/hから15.5km/hにアップしたという(図2)。

平成11年のデータだが、東京23区内の瞬間路上駐車(※)は10万台以上であり、うち都道以上の幹線道路上では1万7000台だ。渋滞やCO2を減らす上では、交通量の多い幹線道路上の路上駐車をなくすことが、極めて有効だ。

全国の都市で、インフラ対策が実施されることを望みたい。安上がりな改良であれば、すぐに実施できるはずだ。取締り強化に併せ、渋滞軽減とCO2削減の相乗効果を生むだろう。

※瞬間路上駐車…一日の延べ路上駐車台数ではなく、ある時点で測った駐車台数のこと。

《伊東大厚》

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