1 | プロバンスの田舎にて |
先日、フランスのプロバンス地方を訪れたときのことだ。この地は世界中からワンサと観光客が訪れる。しかしボクのように安宿を求めるばかりに国道を逸れると、途端に食堂に事欠くようになる。
とくにその日、6月18日は日曜日だった。夕食探しは絶望的だった。そんな中、ひとつの名案が浮かんだ。スーパーマーケットだ。フランスのスーパーは、買い物客の便宜を図るため、よくレストランが併設されているのである。
案の定、標高500mの村、フォルカルキエの、そのまた外れに1軒のスーパーを見つけた。日曜なのでスーパーは閉じていたが、離れにあるレストランには幸い明かりが灯っていた。名前は『ル・ジュングル』。jungle とはジャングルのこと。つまり“ジャングル食堂”である。ワイルドな雰囲気を醸し出したかったのだろう、すだれで敷地を囲ってあった。学園祭を彷彿とさせるベタな演出がほほえましい。8時過ぎ、ボクが入ると、他に客は誰もいなかった。
ウェイトレスのお姉さんが、注文を聞きがてら、「コレエン?」と若干心配そうな顔で聞く。coreenとはフランス語で韓国・朝鮮の人を指す。ボクが「いえ、日本人ですよ」と言うと、若干ほっとした顔で厨房に去って行った……。