小型と中型で大胆な部品共通化
いすゞ自動車が年内に、「次世代グローバルモデル」として開発中の中小型トラックを売り出す。これまで、トラックは積載量に応じて個別に開発するのが常道だったが、統合開発によって大胆な部品の共通化を進めた。
小型では圧倒的な強さを誇っており、新型車の投入でシェアを安定的に4割以上に引き上げる構えだ。トラックの国内市場は、今年度後半から排ガス規制特需が一段落して縮小局面に入る見込みであり、いすゞの攻勢が市場をどう刺激するかも注目点だ。
新モデルの開発コードは「700P」。シャシーなど基本部分を共通化し、積載量2−3トン級の小型トラックと4トン級の中型トラックを派生生産できるようにする。いすゞは小型トラックを海外市場にも投入してきたが、海外では4トン級の市場が拡大しており、中小型の統合開発でコスト競争力を強めることにした。
◆他社を凌駕するコストに
部品・コンポーネンツのモジュール化を進め、積載量だけでなく仕向け地に応じた作り分けも容易にする。統合開発によるコスト削減目標は平均20%程度。原材料費の高騰で、そこまでは届きそうにないというが、「他社を凌駕できるコスト」(井田義則社長)と自信を示す。
顧客向けには、安全、経済性、環境を示す「SEEテクノロジー」を前面に打ち出す。例えば経済性・環境では、エンジンのコンパクト化がそのひとつ。小型トラックの場合、現行の主力エンジンは4.8リットルだが、出力性能を維持しながら大幅な小排気量化を図り、燃費・排ガス性能を高める。
年内に国内と北米で一部車種を投入、来年度には海外全域での販売を開始する計画だ。国内では通常の新型車プロモーションより、スケジュールを1年前倒しして販社や得意先の内覧会などを始めている。
◆自主独立の試金石に
発売時にはデモカーを全国に300台配備するという。国内のプロモーション費用だけで今年度50億円の予算を組んでおり、同社でも空前の売り出し作戦となる。
いすゞの国内小型トラックシェアは2005年度に過去最高の39.7%となった。07年度までの中期計画で目標としている40%も目前であり、新モデルで達成を確実にする。
前期で負の遺産を一掃し、井田社長は「再建完了」を宣言した。米GM(ゼネラルモーターズ)との資本提携解消を機に「自主独立の経営を目指す」(同)ことになったが、統合開発車は、その最初の試金石ともなる。