三洋ゴリラの春モデルは、地上デジタル・ワンセグ対応の『HD830DT』と、HDDへの音楽ファイルリッピングを可能とした『HD860』の2モデルがラインナップされている。HDDとDVDの2メディア、ワイド8インチディスプレー、そしてワンセグ対応となったHD830DTは「ゴリラシリーズのハイエンドモデル」と言っても過言ではないだろう。
しかし、この“なんでもアリ”感があるHD830DTも音楽CDからのリッピングには対応していない。つまり「ミュージックストッカー」機能は採用されていない。DVDドライブ自体は音楽CDの再生にも対応しており、MP3ファイルを収録したディスクも大丈夫。それなのになぜ?
この点について説明員に尋ねてみたが、それまでの話の流れが嘘のように沈黙してしまう。「ディスク容量が違いますし…」とも口を濁すが、20GB容量ではなく30GB容量のHDDをHD830DTに搭載し、真の意味での“ハイエンドポータブル”を目指すこともできたはずだ。そこにはHDDの容量以外に何かもっと他の大きな理由があるのだろう。
実はゴリラシリーズにはカタログに掲載されていないモデルがある。主に通販分野でしか売らない…、さらに言ってしまえば“ジャパネットたかた”専用に近いモデルが存在する。それは『DVC8』というモデルだ。これはHD830DTと同様にHDDとDVDを備えたワイド8インチディスプレー搭載のカタログモデル『HD810』からHDDを外し、DVDドライブのみを搭載したというもの。
2ドライブを、さらには8インチディスプレーを搭載したことでHD810の価格は高くなってしまったが、20万オーバーの価格帯では通販の利用客から敬遠されてしまうため、ジャパネットたかた側の要請によってHDDを外したモデル(DVC8)を用意し、価格を12万円近くまで下げたという噂もある。
そこで推測したのは、このHD830DTにも「HDDを外した通販専用モデルが計画されているのではないか」ということ。単にドライブを外すだけならば、それほどコストを掛けずにつくることができるだろうが、HDS830DTにリッピング機能が搭載されていた場合、ソフトウェアベースでその機能を削るにはコストも時間も必要とするであろうことは想像するに難くない。
「まだ表に出せないモデルがあるからこそ、説明員の口が堅いのでは?」と思わせる展開だが、仮にDVDオンリー+ワンセグ対応のモデルが従来と同様に12万円を切る価格で出てくれば間違いなくヒットするだろう。高田明社長の、あのお馴染みの口調で「これ1台でワンセグ放送も楽しめます」と言っている光景も容易に思い浮かべることができる。