マツダ『MPV』は90年にデビューした初代モデルがアメリカ市場で人気を博して以来、日米両用モデルという性格づけがなされていた。マツダは3代目モデルとなる新型の開発にさいしてその路線を大きく転換し、アメリカ市場では販売しないことを前提に仕様を決めたという。
開発を進めるうえで旧型と大きく違うのは衝突対応だ。「日本、欧州とアメリカでは側面衝突の規格が大きく異なります。ダミーの寸法も違えば、バリアを衝突させる位置も違います。日欧のみ対応としたことで、設計の自由度はかなり高まりました」(金井誠太・研究開発担当常務役員)
アメリカ基準非対応と言っても、衝突安全性に問題が生ずるわけではない。日本や欧州の衝突安全試験に採用されている高速衝突だけでなく、中低速における衝突時の乗員への加傷性も軽減させるなど、衝突安全性は旧型モデルから飛躍的に進歩している。
右ハンドル専用設計となったのも新型の特徴。左右両対応にくらべてステアリングやブレーキ系統などのメカニズムについて、より理想に近い設計を行うことができる。
もちろん左ハンドル化は不可能ではなく、「左ハンドルのニーズがあればすぐに作れます。右ハンドルを左化するのは、左ハンドルを右化するのに比べると、技術的に簡単なんです。実際、社内ではすでに検討も開始されています」(金井氏)