【新連載コラム*AutoStanding】スバルディーラー改革の意外な切り口

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軽リペア事業参入の理由

また、富士重工自身が当該サービス導入・当該市場への参入を決定した、より具体的な意思決定の判断基準を推察すると、おおよそ以下の理由に分類されるのではないだろうか。

(1)顧客の側のニーズとして、新車でないと嫌なわけではないが、小傷だらけはいやだ、という層が増えるのではないか。イメージとしては、美容整形(鈑金)には踏み切れないが、プチ整形(軽鈑金)であれば興味ある、といったところだろうか。

(2)軽鈑金市場には、まだ突出したライバルが不在の状態である。軽鈑金市場とは、「キズ」「ヘコミ」などの小キズ修理を専門とする市場で、およそ5000億円規模とされている。2001年にカーコンビニ倶楽部が独自工法と低価格を武器に、この市場への参入を果たし、翌年にはトヨタ自動車が追随。しかし現在ではカー用品チェーンのオートバックスセブン、カービューティプロ、車検のホリデーなど6000−7000社がしのぎを削る、フラグメント化された市場となっている。

(3)他自動車メーカーとの競争ではなく、アフターマーケットプレーヤーが相手であれば、設備投資と技術要件の敷居が低く、十分参入可能である。

(4)既参入組であり且つ資本関係があるトヨタ自動車のノウハウをシェアできる可能性もある。

(5)自社経営資源から見て、顧客とのタッチポイント回数を増やすことが理にかなっている。

特に富士重工業の場合は、顧客の商品に対するロイヤリティが相対的に高く(いわゆるスバリストと言われるエンスーの存在)、客単価が取れるブランド資産・顧客資産を有しているものの、ロイヤリティを代替に活かすだけのモデルラインナップ(フルラインナップ)は残念ながら有しているとは言えない。

よって、サイクルマネジメントの徹底管理に基づく代替促進による販売維持を追及しようにも、構造的には難しい状況にある。

一方、今後も自動車の使用年数は延びつづけると想定されていることから、代替回転数を上げる努力はしながらも、1台のクルマに長く乗る顧客とのタッチポイント回数を増やして、お客様一人が生涯に渡って払ってくださる金額を増やすことも重要である。こだわりを持つお客様が1台にじっくり乗る場合には、そのニーズにマッチしたサービス提供(今回の件では、これが軽鈑金に相当する)が、このタッチポイント回数増に繋がるのであろう。

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