アストンマーティン(アストンマーチン)は高性能と豪華さを両立させたクルマ作りを特徴としているが、そのなかで『V8ヴァンテージ』(6月30日に日本発表・発売)は走行性能の高さに商品企画の重心を置いている。
2シーター専用のボディは、V8エンジンを収める長いボンネットを持つにもかかわらず、全長はわずか4382mmとトヨタ『カローラ』より短い。
同社の上位モデルと同様、変速機をリアデフと一体化させたトランスアクスルRWD(後輪駆動)方式を取ることにより、重量配分は前49:後51と、RWDスポーツカーとして理想的な数値に近いものとなっている。
ドライバーのヒップポイントは2シーターレイアウトを生かして2600mmのホイールベースの中央より後方に置かれ、スポーツ走行時の挙動を腰で感じ取ることができる。トランスミッションも6速MTのみだ。
全高は1255mmと、ミッドシップスポーツに近い低さだが、車内は高い身長のドライバーでもレーシングヘルメットを着用して着座できるだけのクリアランスが確保されている。ヒップポイントが極度に落とされているためだ。
アストンマーティンジャパンのマネージャー、ヘニング・ロステッド氏は「ウイークエンドのドライブにも十分耐える」と語るが、制限速度の低い公道ばかりを走るのではフラストレーションが溜まるだろう。
週末にサーキットで気軽にスポーツ走行を楽しむような富裕層に適合するという性格付けは、かつては貴族がサラブレッドを駆って競技に興じた乗馬の国、イギリスの文化を現代に継承しているとも言えよう。