市街地の新しい路線バスとして各地で導入されているコミュニティバス。通常の路線バスよりも小型の車体を持ち、住宅街の中まで入ってゆけるのが特徴だ。そのコミュニティバスを使って環境負荷低減に貢献しようとする研究が、早稲田大学で行なわれている。
エコカーワールド(11−12日、横浜)で展示されたのは日野自動車が販売しているミニバス『ポンチョ』をEVにコンバートした実験車両。改造作業は昭和飛行機工業株式会社が手がけているが、実は車両だけが研究対象なのではない。
早稲田大学・理工学部の大聖泰弘教授を委員長とする「先進マイクロバス交通システム開発委員会」が実験しようとしているのは、GPSを用いてバスの位置を検知し、無線通信によってバスの運転手に情報を伝送するというもの。
これだけを聞くと「どこが低公害なの?」という疑問も湧いてくるが、会場では学生たちから具体的なメリットを聞くことができた。
この実験では、営業路線に設けられた通常の停留所のほかに、路線からある一定の距離までバスがルートを逸脱できることを想定している。バスを利用したい人は携帯電話などで乗車希望を運行センターに伝えれば、バスに乗車希望者の位置が伝送され、停留所まで行かなくともバスが迎えに来てくれるというわけだ。
言ってみれば山間部で導入されている、バス路線のある道路に出ればどこからでバスに乗れる「自由乗降区間」のIT化、ということになるだろうか。
これによって人々の外出を促進しながら自家用車の利用を抑制でき、結果的に低公害に貢献できるというわけだ。
さらに運行センターのコンピュータで最適な配車経路を算出することで効率をアップでき、バッテリーの消費を最小限に抑えることが期待されている。また停留所に非接触型の急速充電器を設置することで、バスに搭載するバッテリーを可能な限り小型化する、というアイデアも盛り込まれている。
このバスを使っての、埼玉県にある早稲田大学の本庄キャンパス周辺での実証実験が近いうちに開始されることになっている。
乗客のいるところまでバスが出向く、いわば寄り道することで定時運行が難しくなるという問題もあるが、とくに高齢者などで停留所まで歩くことすら難しい、あるいは気後れしてしまうという人は多いはずだ。ITを駆使した新しい公共交通のありかたを探る試みとして興味深い。