『CLS』は基本的に『Eクラス』のメカニズムをベースとしているモデルで、走りはやはりEクラスに準じているわけだが、わずかに味の違いが表現されているところがポイントだ。エンジニアによると、Eクラスとの違いは「主にステアリングのギア比をよりクイックなものとして設定し、パワステの油圧特性などもレスポンスを高めるような変更・改良を行なった」とのこと。実際に走らせてみると、確かにその違いがわかるだけの走りが実現されていたのだった。ひと口にいってEクラスよりも操舵に対する反応がスッキリとしている。Eクラスの場合、操舵に対しての反応速度は速くないが、忠実に動くという感じが強い。しかし、CLSでは反応速度が若干速められていて、そのうえでリニアな動きが実現されている。サスペンションに関してもEクラスより締まった感じがあり、やはりスッキリした印象。それだけに走り全体でスポーティな感覚が増している。とはいえ、BMWほどスポーティなわけではなく、あくまでメルセデスとしての重厚さや落ち着きを忘れない範疇でのハナシだ。CLSというモデルは、見た目においても走りにおいても、メルセデスベンツが変わりつつあることを思わせるクルマだと感じた。なぜなら、これまでの製品ではほとんど感じられることのなかった官能的な部分が、そこかしこに見受けられるからである。その意味ではこれまでのプロダクトに共通してきた「クルマはこうである」というような高いところからの提案ではなく、「こういうのもいかがですか?」というような、低いところからの提案が感じられ、メルセデスブランドのクルマ作りの新たなる方向性を強く意識させられた。「誰も必要としていないけど、誰もが欲しがるクルマ…」という表現は、まさに今このクラスのクルマを求める人にとっては、琴線に触れる部分ではないだろうか。日本導入は来春とアナウンスされているが、導入された暁にはかなりの注目度が集まるのは想像に難くない。■スペックデータ CLS350/CLS500エンジンタイプ:3.5リッターV6/5リッターV8最高出力(ps):272/306最大トルク(kgm):35.6/46.90-100km/h加速(秒):7/6.1トランスミッション:7速ATフロントサスペンション:4リンクリヤサスペンション:マルチリンクタイヤサイズ:245/45R17 / 245/40R18