テレマティクスのコンテンツを語るとき、必ず挙げられるのは「高速、大容量の通信インフラが整えば音楽データのダウンロードが可能となる」というものだ。新曲をダウンロードし、車内で気軽に楽しむというのはひとつの理想だ。
だが、現時点では「高速、大容量の通信インフラ」が普及しておらず、大容量データのダウンロードというのは最も実現困難なところにある。実際、それが可能になったとしても、今度はパケット料金の高騰、いわゆる“パケ死”を恐れ、使用を躊躇してしまうかもしれない。
大容量でない、すなわち小容量で良いならば現状のインフラでも対処可能なわけだが、そんな逆転の発想を見事に攻めたのが、クラリオンブースで展示されていた「超流通コンテンツ」。音楽などのコンテンツにカギを掛け、それを解除するキーのみをダウンロードして使わせるというものだ。
例えばこうだ。新曲の入った音楽CDをレコード会社は無料で配布するが、楽曲は暗号でロックされており、そのままの状態では最初の30秒しか視聴できない。全部聞きたいという場合には、このロックを解除する“キー”を購入し、メモリカードにダウンロードする。キーを収めたメモリーカードを機器に挿入した場合のみCDのロックが解除され、全編が聞けるようになる。
音楽そのものをダウンロードするのではなく、キーのみをダウンロードするという方法なのでデータ量も小さい。セキュアオーディオに関しても開発が進められており、こちらにも支障となるような問題はない。
テレマティクスについては通信インフラが高いハードルとなっている。この逆転の発想がそのハードルを超えるプレイクスルーになるかもしれない。