【マツダ『アテンザ』発表】5ドアをイメージモデルに選んだ裏事情

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【マツダ『アテンザ』発表】5ドアをイメージモデルに選んだ裏事情
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『アテンザ』のテレビCFなどで訴求されるモデルは5ドアの「SPORT」(スポーツ)となっている。ご存知のように、アテンザのようなファストバック5ドアは日本で販売的に成功した例がほとんどないボディ形状である。

日本、北米、欧州の3つの市場を狙う戦略車種であるアテンザが、ファストバック(ハッチバック)5ドア、4ドアセダン、ステーションワゴンの3つのボディを持つのは当然としても、日本市場に対してのアプローチはセダンとステーションワゴンタイプを選ぶのが手堅い選択だろう。

「事前に行うクリニックやアンケートでは、我々がターゲットにしたい30代前半の子供がいない既婚者のグループは5ドアのデザインを評価する傾向にありました。彼らの世代には現在はワゴンが売れているのですが、彼らは実際には荷物を多く積むのではなく、記号性としてワゴンがカッコいいと思っているわけで、アテンザのような5ドアに対しても肯定的に見てくれました」と語るのはマツダ商品マーケット部の倉橋敏雄・副主査。

「それに、アテンザはマツダにとって久しぶりに出る新型車です。イメージとして一番に打ち出したかったのはスポーティだということ、それがユーティリティを重視したワゴンや、購入年齢層が高いセダンではない大きな理由です。じっさいの構成比はワゴン:5ドア:セダンで5:3:2を予想しています」(倉橋氏)。

アテンザの国内販売目標台数は2500台/月である。世界規模で1万6000台/月以上を予定しているワールドカーにとって国内市場の依存割合は少ない。とくにこのクラスは日本ではもともとトヨタ、日産が強く、さらに市場がミニバンに押されまくっている現状では、販売台数よりもスポーティ・イメージを優先させるマツダの戦略は正しいだろう。

「いまのミニバンブームは、ドライバーの運転する楽しさを犠牲にしてユーティリティを優先させています。これからのマツダは“走りについては妥協しない”クルマしか出しません。それは(よく誤解されるのですが)スポーツカーメーカーになるということではありません。セダンも出しますし、ミニカーも出しますし、ミニバンも作っていきます。しかし、すべてのクルマは走りがすべてに優先します」(同倉橋氏)

アテンザ以降、夏には『デミオ』が、年明けには『RX-8』、そしてファミリアとその派生車というように、去年までと打って変わって新商品が立て続けに出てくる。そう、アテンザは1年の空白を経て久しぶりに出した新型車というだけでなく、これからのマツダブランドの位置づけを市場に対して植えつけてゆくという役割を持ったモデルでもある。

RX-8ではなく5ドアのアテンザで「マツダ=走りのクルマ」というイメージを植えつけることは可能なのだろうか。

アテンザの広告では、『RX-7』と『ロードスター』、マツダを代表するスポーツカーと併走するアテンザが写っている。アテンザのスポーツイメージを重ね合わせることが目的だと思うが、この2台「まだ売っていたの?」と思われるくらい古い。アテンザがターゲットとする30代前半ユーザーが学生のころ、スポーティー車が大ブームだったころに一世風靡したモデルだ。世紀は変わり2002年、マツダにスポーティイメージを持続しているユーザーはどれくらいいるのか心配だ。

確かに1999年のモーターショーを前に「スポーツイメージのマツダ」をフィールズ社長は我々を目の前にして熱弁した。しかし、この3年間、そのイメージの象徴RX-8のショーモデル展示としてのみアウトプットされ、彼らの持つスポーティモデルの活性化を継続的に行ってきたとは言いがたい。SUVを出すことに追われた空白の3年間はマツダのイメージ戦略に大きな重石とならなければいいと思うが、果たしてどうであろう。

《三浦和也》

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