クルマ同士で正面衝突事故を起こしたのに、エアバッグが開かなかったために重傷を負ったのはメーカーの責任だとして、山口県在住の男性がトヨタを相手に500万円の損害賠償を求めていた裁判で、山口地裁萩支部は10日、この男性の請求を全面的に退ける判決を言い渡した。
原告の男性は1998年5月、山口県萩市内の県道を『ハイエースワゴン』で走行中、対向車線からはみ出してきたクルマと正面衝突するという事故を起こした。しかし、原告の乗っていたクルマのエアバッグが作動することはなく、胸を強打して大ケガを負い、クルマも前部を中心に大破した。このため男性は「高い金を払ってオプション装着したのに、作動条件として宣伝している正面衝突でエアバッグが作動しなかったのは明らかな欠陥である」として、トヨタに対して慰謝料を含めた総額500万円の損害賠償請求を行っていた。
山口地裁萩支部の山口浩司裁判官は「エアバッグが作動しなかったのはセンサーが衝撃を捕らえる範囲を10度ずれており、正確には正面衝突でない。また、固定壁に換算した衝突速度もセンサー作動条件よりもわずかに遅かった」という工学鑑定を採用。エアバッグが開かなかったのは欠陥ではなく、作動条件と合致しなかったからだとして男性の請求を棄却する判決を言い渡している。