ホンダの軽EV『N-ONE e:』をベースにしたコンパクトEV『スーパーワン』が話題だ。軽快な走りや、補助金の活用で実質200万円以下で購入できることなどが注目されるが、多くのファンを惹きつけているのはやはり、往年の『シティターボII』をオマージュしたそのデザインだろう。
令和のいま、なぜシティターボIIなのか。デザイナーにその理由、こだわりを聞いた。
◆昔の価値観だけを追っているわけじゃない

「ホンダの楽しいクルマの象徴としてまずシティターボIIを最初に描き、そのまま(N-ONE e:をベースに)なぞろうというのが始まりです」と語るのは、デザイナーの中島英一さん(本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ デザイナー)だ。
しかしスーパーワンは電気自動車であることから、「昔の価値観だけを追うと、その世代だけを取り込むことになるので、そうではなく、新しい世代の人たちが喜ぶようなものを作りたい」という開発責任者からの要望があった。それをきっかけに、さまざまな方向性を模索していったという。
調査をしていくと、「若い人たちも昔のものが好きだというだけでなく、いろんな世代がシティターボIIのような元気なクルマが好きだということわかりました。そこで改めてシティターボIIのオマージュを取り入れながら新しいクルマを開発していこうという決心につながりました」と経緯を話す。つまり始まりはシティターボIIだったが、「そこから模索し、寄り道をして、結局“シティターボIIは面白いよね”に戻ってきたというストーリーです」とのことだった。
◆決定打は「ワクワク」だった


シティターボIIをオマージュするにあたって、様々な提案があった。「レトロフューチャー的な、昔の映画のSFのような世界観のブリスターフェンダー解釈があったり、GTカーのようなエアロ形状のもの、インテグレートした丸フェンダーも検討しました。若者が解釈したブリスターフェンダーやもうちょっとおもちゃっぽいようなイメージのもの、ボーイズレーサー風や、さらにエッジが効いたものなどもありました」と中島さん。そういった案は、クルマのサイズを感じさせないこともあり、データを作りながら検証した結果、不採用に。最終的に残ったものは、「一番テーマが明快だった」ことが決定打となった。
「ブリスターフェンダーでクルマを最も大きく見せつつ、その出た分の寸法に機能を入れていました。そしてその機能もUの字のフロントのグラフィックがリアでもリフレインしているので、一台としてテーマが明快でまとまり、お客様にも伝わると考えたのです。これをベースにスーパーワンの形になるまで精査しました。このクルマの走りの楽しさや特にステアリングを切って走り出しそうな斜めの構図などワクワクしますよね。やんちゃ感もありますし、これが一番でした」(中島さん)
因みにこのコンペには、20代前半から50代半ばまで幅広い世代が参加していたが、この最終案については「ワクワクする」ということで満場一致に近い結果だったそうだ。


◆走りのイメージを水平基調に落とし込んだ
スポーティな印象をデザインで表現する場合、通常はウェッジシェイプ(楔形のようにフロントからリアに向かってせり上がっていくこと)を採用しがちだが、スーパーワンは徹底した水平基調だ。これには中島さんが実際にN-ONE e:のトレッドを広げただけのテスト車に乗った経験も含まれているという。「このクルマはあまりロールしないんです。重いバッテリーが床下にあって、トレッドも広げているので、フラットにキュンキュンとコーナリングするような感じ。このクルマの動きをエクステリアで表現するのは水平基調だと思いました。ブリスターフェンダーや、下端のサイドシルガーニッシュも後ろに向かって水平です。見た目と走りが1対1、イコールになるようにこだわりました」と語る。
そのブリスターフェンダーこそ、スーパーワンのエクステリアで最大の特徴といって良いだろう。中島さんが最もこだわったのはトレッドが広がったことによるスタンスの良さで、それを表現するためにこのブリスターフェンダーが貢献している。









