LUUP(ループ)は6月9日、東京都北区で6月2日に発生した自動車と特定小型原動機付自転車の事故について、同社サービス利用者が死亡したと公表した。警察による捜査が進められており、同社は捜査に全面的に協力するとともに、交通安全対策や啓発活動を強化するとしている。
今回の事故を受け、2023年7月に始まった特定小型原動機付自転車(特定原付。いわゆる電動キックボードなど)制度の課題に改めて注目が集まっている。
◆特定原付制度、3年で出てきた課題
警察庁によると、特定原付は16歳以上であれば運転免許が不要で利用できるいっぽう、最高速度20km/h以下の車両として車道通行を原則とする。歩道と車道の区別がある道路では車道の左側を走行しなければならず、自動車との混在交通が前提となる。
●特定原付の違反件数は増加
制度開始後、違反件数は増加している。
警察庁の「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」資料によると、2025年11月末時点の特定原付の検挙件数は3万4804件に達した。違反内容では通行区分違反が約6割を占め、信号無視が約2割となっている。利用者が交通ルールを十分理解していない実態が浮かび上がる。
●9割弱がレンタル車両での事故
事故の多くがシェアリング車両で発生している点も特徴だ。
同資料では、特定原付の交通事故の9割弱がレンタル車両によるものと分析している。警察庁は、シェアリング事業者による交通ルール周知や安全教育の強化が重要だとしている。
飲酒運転も課題の一つだ。
警察庁資料によると、2024年に発生した特定原付の飲酒事故は46件だった。全てシェアリング車両による事故で、約8割が単独事故だった。事故発生時間帯は深夜から未明に集中しており、負傷部位は頭部や顔面が約8割を占めた。
シェアリング車両は駅周辺や繁華街に多く配置されており、「終電後の移動手段」として利用されるケースがあることが背景にあると想像できる。
●ヘルメット着用率は高くない
ヘルメット着用が努力義務にとどまることも指摘されている。
特定原付は自転車と同様にヘルメット着用が努力義務となっている。警察庁は着用を推奨しているが、利用者の着用率は必ずしも高くないようだ。転倒や衝突時の頭部損傷リスクが課題とされている。
業界側も対策を進めている。
一般社団法人日本マイクロモビリティ協会は、会員事業者向けの自主ガイドラインを策定し、利用前テストや交通安全教育、違反者への利用停止措置などを求めている。だが、利用者の増加に対して安全意識の浸透が追いついているかは引き続き検証が必要な状況だ。
特定原付は、公共交通の補完やラストワンマイル移動の担い手として普及が進むいっぽう、免許不要で車道を走行する新しいモビリティでもある。今回の死亡事故は個別事故として原因究明が待たれるが、制度設計や安全対策のあり方を改めて問う事例となりそうだ。
◆特定小型原動機付自転車(特定原付)とは
2023年7月1日に新設された車両区分で、電動キックボードなどが対象だ。道路交通法上は原動機付自転車の一種だが、一定の条件を満たせば16歳以上は運転免許なしで利用できる。
●主な規格
- 最高速度:20km/h以下
- 定格出力:0.6kW以下
- 車体サイズ:長さ1.9m以下
- 車体サイズ:幅0.6m以下
- 走行中に速度設定を変更できない
- AT(オートマチック)であること
- 最高速度表示灯を装備すること
これらの条件を満たさない車両は、一般原付など別の区分となる。
●主な利用条件
- 16歳以上
- 運転免許不要
- ナンバープレート装着が必要
- 自賠責保険加入が必要
16歳未満の運転は禁止されている。
●主な交通ルール
- 車道通行が原則
- 道路左側を通行
- 信号遵守
- 二段階右折
- 二人乗り禁止
- 飲酒運転禁止
交通ルールは原付に近いが、最高速度は20km/hに制限されている。
●歩道を走れる場合
最高速度を6km/h以下に制限し、最高速度表示灯を点滅させる「特例特定原付」の条件を満たした場合に限り、自転車通行可の歩道などを通行できる。
●ヘルメット
着用は義務ではなく努力義務。ただし警察庁や警視庁は着用を強く推奨している。
特定原付は免許不要で利用できるいっぽう、車道通行が原則であることから、自動車との速度差や交通ルールの理解不足が安全上の課題とされている。





