立山黒部アルペンルートでBYDの『K8』が運行開始…環境に適したEVバス、安定感のある走りでスムーズに加速

BYD K8 フロントスタイル
  • BYD K8 フロントスタイル
  • トンネル内を走るBYD K8
  • 左からBYDオートジャパン代表取締役社長の東福寺厚樹氏、BYDジャパン執行役員副社長の石井澄人氏、BYDジャパン取締役社長室室長張俊衛氏
  • トンネルには坑道幅を広げた場所があり、ここで上下車両がすれ違う
  • BYD K8 リヤスタイル
  • BYD K8 運転席
  • BYD K8 客室
  • 充電はCHAdeMO方式を採用

「立山黒部アルペンルート」の立山側のトンネル区間を、BYDのバス『K8』が運行することになった。

戦後の復興期、関西電力が関西地方の電力需要を補うために建設した黒部ダム。その黒部ダムの建設時に使用されたトンネルを含む道路が、現在「立山黒部アルペンルート」という名の観光ルートとなっている。

立山黒部アルペンルートを富山側からたどると、立山駅から美女平までがケーブルカー、美女平から室堂までがディーゼルおよびハイブリッドバス、室堂から大観峰までが立山トンネル電気バス(今回の取材対象)、大観峰から黒部平までがロープウェイ、黒部平から黒部湖までがケーブルカー、黒部湖から黒部ダムまでが徒歩、黒部ダムから扇沢までが関電トンネル電気バスである。立山から扇沢まで、3種のバス、2種のケーブルカー、1種のロープウェイ、徒歩を組み合わせてやっとたどり着けるルートだ。

直線距離にして約37km、標高差1975mのルートは、冬場は完全に通行止めとなり、毎年春の山開きで開通する。開通直後、美女平から室堂までのルート上にある「雪の大谷」と呼ばれるエリアでは、除雪された雪の壁が左右にそびえ立つ景観が有名で、これを目当てに国内外から多くの観光客が訪れる。

立山黒部アルペンルートは自然保護の観点から、全線に渡って一般車の走行が禁止されている。バスが走行するルートも、バスや整備用車両、緊急車両以外の走行は禁止だ。

今回BYD K8が導入された室堂から大観峰までの立山トンネル電気バスと、黒部ダムから扇沢までの関電トンネル電気バスは、従来トローリーバスと呼ばれるバスが採用されていた。関電トンネルと立山トンネルでそれぞれ運行されていたトロリーバスは、関電が2018年、立山が2024年に廃止された。

トローリーバスとは、架線から電気の供給を受けて走行する電気バスである。両路線とも全線がトンネル内を走行するため、天候に左右されることなく架線による電気の供給が可能という、この環境に適したモデルだった。しかし、老朽化などの要因があったため、廃止を余儀なくされた。 全線トンネル内を走行するため、排ガスが発生するICEモデルは使いにくく、環境保全に力を入れている立山黒部アルペンルートでは、やはり電気バスの方が望ましい。関電トンネル電気バスでは従来のディーゼルバスを改造したコンバートEVが採用されたが、立山トンネル電気バスではBYDのK8が採用された。採用台数は8台で、このうち6台が常時運行、2台がバックアップに回っている。


《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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