サスペンションメーカーのTEIN(テイン)と、世界的オイルメーカーであるBPカストロールは「Castrol with TEIN」チームを立ち上げ、2025年の全日本ラリー選手権と全日本ダートトライアル選手権に参戦することを発表した。
◆あの強かったカストロールカラーが帰ってきた!

赤と緑がイメージカラーのカストロールは、そのカラーでのレースやラリー活動が印象的。全日本GT選手権(現SUPER GT)では、「カストロール・トムス・スープラ」が1997年、2000年にチャンピオンを獲得している。世界ではトヨタのWRCマシンがカストロールカラーだったこともある。そして、その歴史上で忘れてはいけないのが1995年サファリラリーで優勝したトヨタ『セリカGT-FOUR』だ。
そもそもテインはラリー競技に参戦するドライバーの藤本吉郎氏とコ・ドライバーの市野諮氏が「ラリー競技に使えるもっと良いサスペンションを作ろう」と横浜で起業した会社。現在は市野氏が社長、藤本氏が専務取締役を務める。サスペンションメーカー経営と並行して、順調にラリードライバーとしてのキャリアを重ねた藤本氏はTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)のワークスドライバーに抜粋され、サファリラリーに参戦。1995年に日本人初となる優勝を果たした。そして、現在までサファリラリーの日本人勝者は藤本氏だけという快挙だった。
その藤本氏のセリカGT-FOURをサポートしているのがカストロールで、マシンもカストロールフルカラーだったのだ。そんな縁から約28年。再び物語は動き出した。このサファリラリー優勝車両はそのまま保管され、経年劣化が見られていた。その車両ごと譲り受けた藤本氏は自腹で数千万円を投じてヨーロッパの当時のメカニックにクルマを送りフルレストアを実施。東京オートサロン2023のテインブースに展示され話題を集めた。
そこにたまたま通りがかったのがBPカストロールの平川雅規社長。懐かしいカラーリングのセリカを目にして、藤本氏と意気投合。翌年の東京オートサロン2024、東京オートサロン2025とカストロールとテインは共同でブースを構えて出展した。
そこで出たのが新たにタッグを組んで競技にチャレンジするということ。国内では1999年まで全日本GT選手権にフルカラーのスープラが走っていたが、その後フルカラー車両の参戦はなし。イギリスのカストロール本社の方針もあり、モータースポーツよりも幅広い世界でのイメージ戦略を行ってきていたことでモータースポーツでのカストロールカラーは見られなくなっていた。
だが、再びモータースポーツでのそのパフォーマンスを証明しその性能をアピールしようと、イギリスのラリーチームへのサポートを開始。MEMチームのGRヤリスはイギリスラリー選手権・ラリー2クラスにおいてシリーズチャンピオンを獲得した。

そして、国内では「Castrol with TEIN」チームを立ち上げ、全日本ラリー選手権と全日本ダートトライアル選手権に参戦する。全日本ラリー選手権は鎌田卓麻選手・松本優一選手のコンビ。車両はシュコダ『ファビアR3』で参戦。マシンメンテナンスはシムスレーシング。もちろんカストロールのオイルが使用される。サスペンションはR5クラスに採用されているホモロゲーションモデルしか使うことができず、テインはセッティング面でのエンジニアリングのサポートを行う。

全日本ダートトライアル選手権もドライバーは鎌田卓麻選手。こちらは4WD化されたスバル『BRZ』で、ハイパワーエンジンによるパワーを4輪で路面に伝える。もちろんオイルはカストロールで、サスペンションはテインを採用する。

テイン執行役員の渡邊宏尚さんは「自分もカストロールカラーのクルマを見て育っただけに大変興奮を覚えます。弊社としてもモータースポーツ発祥ながら、近年はミニバンなど街乗りのクルマで多く使っていただいておりまして、競技色がやや薄れてきていた面もありました。そこでカストロールとタッグを組んで国内外にテインをアピールしていきたいと思います」とあいさつ。

BPカストロール平川雅規社長は「古くから競技にチャレンジし、そこで培った技術を皆様にお届けしてきました。近年はモータースポーツのイメージは昔ほどではありませんでしたが、2026年からアウディF1チームをサポートします。現在もフォーミュラeではジャガーチームをサポートし、ミッションオイルを提供しています。motoGPではHONDAのHRCチームをサポートします。そして、この全日本ラリーとダートトライアル選手権のチームを立ち上げてさらにアピールしていきます」と述べる。
カストロールは、東京オートサロン2025において再生ベースオイルについての展示が話題となった。現在ヨーロッパではカストロール製品の約20%に再生ベースオイルが使われているという。
再生ベースオイルは廃油を回収し、ろ過するのではなく、再度蒸留に近い処理をして使える成分をベースオイルとして使うというもの。欧州では一般的になってきているが、日本にはまだその設備がなく、今回のラリー、ダートトライアル車両には未採用とのこと。しかし、世界的に環境負荷の少ない再生ベースオイルを使ったモータースポーツ活動も注目されている。すでに既述のイギリスラリー選手のMEMチームのGRヤリスには再生ベースオイルを含んだオイルが使われている。そういった新たなチャレンジにも注目が集まる。