「6歳をすぎれば、もう安全」ではない、チャイルドシート義務化から20年、次に目を向けるべきは【岩貞るみこの人道車医】

大人用シートベルトに適した体格に成長するまで、ジュニアシートは必要(写真はイメージ)
  • 大人用シートベルトに適した体格に成長するまで、ジュニアシートは必要(写真はイメージ)
  • チャイルドシート義務化から20年、次に目を向けるべきは? 写真は「ジュニアシート」のイメージ

2024年8月18日、福岡市の国道で、軽自動車が中央線を越え、走ってきた路線バスと正面衝突する事故が起きた。報道によると、運転していた母親は脚の大けがだったが、後席にいた7歳と5歳の姉妹が亡くなったという。まずは、二人のご冥福をお祈りしたい。

この原稿を書いている8月20日朝の時点の情報では、後席の二人はシートベルトを着用していたとのこと。公道でもシートベルトをさせるとは、この家族は安全意識の高い人たちだったことがわかる。ただ、悔しいのは「正しい情報」が彼らに伝わっていなかったことだ。その罪は誰にあるのか。


◆「6歳をすぎれば、もう安全」なわけがない

以前もこのコラムで書いたが、本来、シートベルトは、鎖骨の中央と左右の腰骨といった硬い骨の部分で体を受け止めて支えるもの。ただ、身長120~150cm(車両によって異なる)では、首にかかったり、腰骨より上に腰ベルトがきて、結果、衝突時はやわらかい腹部に食い込み内臓損傷を起こしてしまう(内臓損傷については、ひとつ前のコラム「シートベルトが凶器になる、守る内蔵・傷つける内蔵の違いとは」を参照)。

大人用シートベルトは小学生くらいのこどもたちの安全装置ではまったくないのに、その情報が、本当に伝わらない。私が考えるもっとも大きな理由は、道路交通法だ。これが「六歳未満はチャイルドシート(以下CRS)の着用義務」そして、「高速道路と自動車専用道では、全者シートベルト着用義務」とあるからである。

人は、危ないからルールがあると考える。だとしたら、この道交法では、「6歳をすぎれば、もう安全。大人用のシートベルトをさせれば大丈夫」と考えてしまうのではないだろうか。

そのため、CRSを卒業した小学生たちが後席で傷つくケースは後を絶たない。今朝もそうした患者を受け入れる某小児救急病院の医師から「いい加減、なんとかならないのか」と、悲痛な連絡をもらったばかりだ。

何度も書くが、6歳の誕生日を迎えた瞬間から、大人用シートベルトが適切に使えるようになる魔法のようなことは起こらない。大人用シートベルトに適した体格に成長するまで、ジュニアシート(学童用シート)でサポートしなければいけないのである。

つまり、目指すは、ジュニアシートがこどもを守るためには不可欠という情報。そして、使用率の向上である。

◆CRS義務化から20年、次に目を向けるべきは

欧州の法律に目を向けると、ドイツとイタリアは、身長150cm以下。スペインとスウェーデンは、身長135cm以下。イギリスは12歳以下、フランスは10歳以下に、CRS(ジュニアシートを含む)の着用を義務付けている(詳細割愛)。では、日本のCRS義務は、なぜ6歳未満という、訳のわからないほど幼い年齢になっているのか。


《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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