日本の認証制度は、実態に合っていないのか。
クルマを大量生産するために必要な、日本の認証制度。新たに設計した車両を、決められた方法で試験をして道路運送車両法の保安基準への適合性を審査し、クリアすれば型式を指定する。それと同じ《設計図》で作った車両は、工場で大量生産が可能になる(完成検査で同様に作られているかを確認)。
2024年1月26日、国交省はダイハツの不正問題を受けて、関係各社85社に調査報告を指示した。その結果、今回、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハに、この認証試験に不正があったことが明らかになった。
6月3日に行われた各社の会見では、「時間短縮」と「独自解釈」という言葉が繰り返し使われていた。「時間もないことだし」という圧迫感のなかで「もっと厳しい条件なのでいいだろう」「これとこれを組み合わせたら、同様の数値が出ることになるからいいだろう」というものだ。
だったらなぜ、今のルールが存在するのか。今の日本の認証制度は、実態に合っていないのか?
◆今のルールの意味
より厳しい条件で行えば、より安全である。メーカーはそう考えて行ったようだけれど、厳しければ安全性が高まるとは100%言いきれない。速度が遅ければ遅いなりの車両への損傷があり、ひいては人への傷害を引き起こす。高エネルギー外傷は、一見わかりやすい。ただ、それと比較してゆっくりぶつかる・食い込むといった傷害は、初見では発見しにくく後からじわりと悪化する。医療の現場によると、場合によっては見落としにつながり致命的な事態をひきおこすこともあるという。
現行の試験方法は、日本の交通社会、事故実態をふまえて定められたものだ。もちろん、クルマは国を超えて販売し使われるものなので、国連の欧州経済委員会の元に、安全に関する作業部会(WP29)があり、安全一般、衝突安全、自動運転、排出ガスとエネルギー、騒音とタイヤ、灯火器という6つの項目について協議がされ基準を作っている。もちろん日本も参加して強いイニシアチブをとり、WP29に対して日本案を提出して通し続けている。つまり、日本だけが厳しい基準を設けて、無理難題を押し付けているわけではないのだ。
◆実態との差異
では、実態に合っていないのか。これは、今後、調整されていく部分ゆえ続報にまとめたい。ただひとつ言えるのは、「実態に合っていないので、独自解釈でやりました」は、言い訳にならない。実態に合っていなければ、先に国に対して状況を説明し、ルールを変えていくのが筋だろう。
今回のトヨタの会見を見て、私は悔しく思ったことがひとつある(ひとつだけじゃないけれど)。それは、質疑応答で「トヨタの不正を知ったときの気持ちを教えてくれ」という問いに対する取締役会長・豊田章男氏の回答だ。
