全固体電池ロードマップ:まずは実証実験的な市場投入から…沖為工作室 Founder CEO 沖本真也氏[インタビュー]

全固体電池ロードマップ:まずは実証実験的な市場投入から…沖為工作室 Founder CEO 沖本真也氏[インタビュー]
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レスポンスセミナー「2030年に向けた全固体電池ロードマップと各社の動向~競争環境の現在地と将来予測~」が開催される。登壇するのは、EV・電子機器・IT分野を得意とするシンクタンク、沖為工作室 Founder CEO 沖本真也氏だ。

全固体電池は、各国の電池メーカーや自動車メーカーが2027年ごろをめどに市販車搭載を目指した量産技術開発に努めている。セミナーでは、市場投入される全固体電池の性能は? 量産技術は? 課題はクリアされるのか? 現在の開発状況はどうなっているのか? これらを国内外の状況を含めて解説される。

沖本にその概要と、現在の全固体電池の市場動向について聞いた。

■全固体電池の現状:量産化は進んでいるのか

――全固体電池について、市場ではさまざまな期待がかけられています。全固体電池の開発状況はどうなっているのでしょうか。

沖本氏(以下同):トヨタは早ければ2027年には全固体電池を搭載した電動車を発売するとしています。業界トップのトヨタの動きは各国の自動車メーカー、電池メーカーが注目しているところです。しかし、現状、装置産業側で全固体電池に対応した製造装置、ラインが確立されていません。既存の電池メーカーの設備・機器では対応できないということです。トヨタは、全固体電池の積層技術などに独自の特許を多数持っており、装置も自前で開発する取り組みを進めているところです。

したがって、いきなり大量生産が可能になり市販車に普通に搭載され始めるというより、実証実験的な製品投入になるのではと考えています。

――全固体電池に対して半固体電池というのもあるようです。これはどういった電池なのでしょうか。

リチウムイオン電池の正極と負極の間に挟む電解質に着目すると、車向け電池では従来からある液体電解質のものと、典型的には酸化物系にポリマーを複合させた半固体電池のもの、LiGPS、LiSnPS、LiSiPS等の硫化物系を使う全固体電池のものに分けることができます。今、中国市場で理解されている定義に照らし合わせると、従来型のリチウムイオン電池の電解質は液状である一方、ポリマー+酸化物系の電解質は電池中の液体割合を10%以下に抑えることができ、これを一般に半固体電池と呼んでいます。全固体電池では電解質が完全に固体電解質となります。全固体電池は車向けでは硫化物系を電解質に使うアプローチが先行していますが、ポリマーや酸化物での全固体電池も研究されています。

リチウムイオン電池において、現状の正極材、負極材では半固体電池でも、エネルギー密度が400Wh/kgあたりが限界とされています。全固体電池では、リチウム金属系の負極などと組み合わせて500Wh/kg以上のエネルギー密度、および急速充電性能が期待されています。


《中尾真二》

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