来たる10月3日、「EV海外OEM・部品メーカーセミナー第11回 マーレが目指す将来戦略「MAHLE 2030+」が開催される。セミナーに登壇するのは、マーレジャパン株式会社 ヴァイスプレジデント アジア日本担当の坂野慎哉(ばんのしんや)氏。
カーボンニュートラルに向けて自動車業界が大きく変化するなか、マーレは「MAHLE 2030+」という戦略を掲げ、3つの戦略的領域「電動化」「熱マネジメント」「クリーン燃料による内燃機関」に注力している。
今回のセミナーは「MAHLE 2030+」をふまえ、以下のテーマで進められる。
1.自動車業界そしてMAHLEを取り巻く環境
2.MAHLEの概況
3.MAHLE 2030+ ストラテジー
4.日本並びにグローバルにおけるMAHLEの技術・製品
5.ディスカッション・質疑応答
そして講演の後には、本セミナーのモデレーターである日本電動化研究所 代表取締役の和田憲一郎氏を交えて、参加者からの質疑応答やディスカッションの時間が用意されている。
セミナーの詳細はこちらから。
坂野氏にセミナーの見どころを聞いた。
■事業領域を拡大してきた10年間
マーレと言えば“鍛造ピストン”を思い浮かべる向きも多いだろうが、現在のマーレと言えば、エンジンの部品にとどまらず、エンジン補器類やサーマルマネジメント、パワーエレクトロニクスまで、幅広いコンポーネントを取り扱うドイツの世界的なサプライヤーだ。
現在のマーレがどのような業容を有しているのか、坂野氏は以下のように説明する。
「マーレは4つの主要なビジネスユニットを有しています。1つ目はエンジンシステム&コンポーネンツユニットで、ピストンやカムシャフトなどのエンジン内部の部品を扱っています。
2つ目はフィルター&エンジンペリフェラルズユニットです。この部門では、エアクリーナーやオイルフィルターなどのフィルター類と、エンジン補器類を手掛けています。
3つ目のユニットはサーマルマネジメントユニットで、これは主に車室内のサーマルコントロール・バッテリー用の熱管理・エンジン冷却、以上3つの領域に分かれます。エンジン冷却部門は、従来の内燃機関だけでなく、電動車システムにおけるラジエーターやファンを含み、現時点で最も売り上げが多いセクターとなっています。
4つ目はエレクトロニクス&メカトロニクスユニットで、トラクションモーターやインバーター、パワーエレクトロニクス製品などを取り扱っており、大型エンジンの電装品なども扱っています。」

以前のイメージからは考えられない幅広い事業を展開しているマーレだが、これらの多様な事業展開は、ここ10年の間にM&Aを通じて獲得されたものだという。
「10年前までは、エンジンコンポーネントとフィルター&エンジンペリフェラルズの2つのユニットのみがありましたが、その後M&Aを通じてサーマルとメカトロニクスのユニットを追加しました。
現在、これらの4つのビジネスユニットは全て日本に拠点を持っています。エンジンシステムコンポーネントユニットは、埼玉県桶川にあるテクニカルセンターで開発を行い山形県内の工場でピストンやライナーなどを製造しています。また、フィルター&エンジンペリフェラルズの本部は川越にあり、日本国内に4つの工場を擁しています。
さらに、サーマルマネジメントユニットは、2021年2月からホンダの関連企業であったケーヒンサーマルの事業譲渡を受け、新たな部門として迎え入れました。」
また坂野氏は、マーレが日本国内に開発と製造の拠点を持ち、大きなリソースを持って自動車メーカーと連携しながらビジネスを展開していることを強調する。
「マーレは4つの主要事業を日本でも展開しており、正社員2500人を雇用し、売り上げは約900億円にのぼります。
日本におけるマーレの成り立ちとして、2015年には静岡県沼津に拠点を置く国産電機という会社を買収し、これが現在、我々のメカトロニクス事業の日本基地となっています。さらに遡ると、1968年より当時の泉自動車工業(のちのイズミ工業)と技術提携を開始し、2005年にはマーレエンジンコンポーネンツジャパンとしてピストン事業をスタート致しました。フィルター部門に関しては、かつて日産が所有していた土屋製作所(のちの株式会社テネックス)をマーレが買収し、現在の形となっています。」

自動車部品のなかでも、マーレがその技術力で圧倒的なシェアを獲得するに至った製品がある。樹脂製のシリンダーヘッドカバーだ。