レクサス RZ 試乗でBEVについて考える[後編]…外すと辛い使い方の“条件”【池田直渡の着眼大局】

いざ充電しようとするが…

500kmで足りるか足りないかが分岐点

理想ケースから外れた時の厳しさ

BEVを受け入れられる環境にあるかどうか

レクサス RZ 450e
  • レクサス RZ 450e
  • レクサス RZ 450e
  • ディーラー2件をハシゴしてようやく90%に…
  • レクサス RZ 450e 急速充電システム(参考画像)
  • レクサス RZ 450e 普通充電システム(参考画像)
  • レクサスオリジナル普通充電器
  • レクサス RZ 450e
  • レクサス RZ 450e(参考画像)

レクサスのBEV『RZ』で伊豆へのドライブに出かけた著者。前編では、ADASや乗り心地、内外装等、プロダクトの特徴を中心に記した。後編では、今回の試乗で至った「BEVに乗る生活」についての考えを述べる。

◆いざ充電しようとするが…

さて、充電の話である。以後、レクサスRZを俎上に上げつつも、BEV全体の一般論に話は移って行く。2023年時点のインフラを前提に、BEVに乗り換えるために知っておかなければならないことをまとめたい。まずはこのドライブの顛末として、充電がどういう状態だったかを説明しながら、BEVに乗る生活を考えていきたいと思う。

サンアロハを出たのが21時30分。ぼちぼち帰路に着きたいのは山々なのだが、そろそろ早めに充電したいと言う別の事情もある。トヨタ東京本社で満充電で借り受けたレクサスRZは、筆者の事務所のある学芸大学駅、そこから伊東への往復でバッテリーは残り16%。そろそろ充電しないと、充電速度が落ちる。

バッテリーの充電速度は色んな要素で変わる。充電器の容量、車両側の充電上限性能、そしてバッテリーの残量、それに気温というか、もっと厳密に言えばバッテリーセルの温度だ。

2023年7月現在、CHAdeMO(チャデモ)の場合、特別高機能な機材が設置された場所を目指して行かない限り、期待できる充電器性能は良くて50kW機だ。レクサスRZの最大充電能力は150kWなので、まあとりあえずこちらは十分。なのだが、後半で詳述するが、バッテリーというのは電気の残り具合で充電性能が変わる。上下20%は充電速度が落ちる。だからあまり減らしたところから充電を開始すると、30分で充電できる量が減るのである。

当てにしていた日産本社の充電器は、すでに千客万来というか先客万来。2台の充電器に接続されたうち、某ドイツ車の方は充電が終わっているが、ドライバーが帰ってこない。仕方なくみなとみらい地区を彷徨って、ナビに案内されたウェスティンホテル横浜で充電を始めようとすれば、ずらっと並ぶ充電器はどうもポルシェ専用。ナビが案内する以上、もしかして使えるのかと色々やってみたがダメで、諦めて他に行こうとしたら、入り口から見えにくい塀の裏にCHAdeMO充電器を発見した。日産からここまでの充電器探しでゆうに30分は無駄にした。

そうしてやっとたどり着いた充電器で充電開始。30分後のバッテリーレベルは50%。友人2名をそれぞれ自宅に送り、目黒の事務所に帰って、一晩かけて普通充電器で充電すればいいのであれば、全く問題はない。本来はそうやって使うものだ。

レクサス RZ 450e 急速充電システム(参考画像)

◆500kmで足りるか足りないかが分岐点

問題はそういう母港に寄港することができないケース。BEVはこう言う例外運用に極めて脆弱である。自宅充電できずに空中給油だけで運用しようと思うと結構辛いことになる。逆に言えば、満充電からの航続距離+120kmの間に、長時間占有できる普通充電器のある場所での充電を挟むことがレクサスRZの、ひいてはBEVの運用前提となる。


《池田直渡》

池田直渡

自動車ジャーナリスト / 自動車経済評論家。1965年神奈川県生まれ。1988年ネコ・パブリッシング入社。2006年に退社後ビジネスニュースサイト編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。近年では、自動車メーカー各社の決算分析記事や、カーボンニュートラル対応、電動化戦略など、企業戦略軸と商品軸を重ねて分析する記事が多い。YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。著書に『スピリット・オブ・ザ・ロードスタ ー』(プレジデント社刊)、『EV(電気自動車)推進の罠「脱炭素」政策の嘘』(ワニブックス刊)がある。

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