EVへの“温度差”と付加価値への期待「電動化シフトへのロードマップ」とは…日本アイ・ビー・エム 鈴木のり子氏[インタビュー]

EVへの“温度差”と付加価値への期待「電動化シフトへのロードマップ」とは…日本アイ・ビー・エム 鈴木のり子氏[インタビュー]
  • EVへの“温度差”と付加価値への期待「電動化シフトへのロードマップ」とは…日本アイ・ビー・エム 鈴木のり子氏[インタビュー]

グローバルにおける消費者も経営者も、それぞれのEVに対する意識は転換点に来ていると、日本アイ・ビー・エム株式会社で自動車・電気・エネルギー産業のリサーチ・グローバルリーダーを務める鈴木のり子氏は確信している。この結論にどのようにして達したか?

世界各地の自動車メーカーやサプライヤー、バッテリーメーカーや充電設備などエコシステムプレーヤーの、エグゼクティブや部門責任者、ディレクターら1500名以上を対象に行われた包括的な調査から得られたデータを元に、その数値の裏にあるトレンドを2月16日の無料オンラインセミナーでつまびらかにしていく。

◆EVに対する国や市場との温度差

毎年1月に米国ラスベガスで開催されるCESにおいて、電気自動車(EV)はずっとホットトピックであり続けてきたが、コンセプト的な展示が多かった従来とうって変わり、今や市場ローンチした際に売上ボリュームが焦点になる、そういった現実的な商品に近いものが増えてきたという。市場全体におけるEVシェアは未だ数%台であっても、消費者の興味は徐々に高まっており、国や市場の成熟度によってかなりの、そして意外な温度差があることも分かっている。

だからこそ自動車産業が公表する目標値は概して高いが、実際にアナウンスされた販売目標数値と、2030年段階における達成度見込みの間には「乖離が生まれている」と鈴木氏は指摘する。メーカー経営陣のようなEV販売をプッシュする立場と、IEA(国際エネルギー機関)のような第三者機関としてカーボンニュートラルを推進する立場ですら、差が生まれている。

にも関わらず、内燃機関の商品が2041年以降も継続されると考える関係者はゼロだったという。自動車そして周辺業界の、EV移行への本気度から導き出されるのは、EV関連への開発投資の集中と、新たなビジネスチャンスの創出だが、今後それらはどう推移していくのか? データ解析から得られた実状とその“ニュアンス”を、講演では立体的に浮かび上がらせる。

◆経済的インセンティブとサブスクの付加価値

他方で、消費者がEVを買う動機の上で障害になることは何か? メーカーのエグゼクティブ側は、急速充電インフラの充実次第で、あるいは環境意識の表れとして、顧客がEVを買うと見ている。だが、潜在的な顧客の側は、じつは車両価格の低下や補助金の有無といった経済的インセンティブにメリットを感じており、環境への配慮は数ある動機の上位にはランクされないという。

だがコストには敏感で、「内燃機関の車と比べた際に、EVがどのぐらい高くても許容して買うか?」という質問についても、「消費者とメーカーの間では未だ大きな乖離があり、国別で見ても大きな違いがあることが興味深い」と鈴木氏は指摘する。

また、世界的に注目されている販売ソリューションがサブスクリプション(サブスク)だ。どのような付加機能・付加価値を欲するか消費者に尋ねると、「価格、サイズ、ブランド、バッテリー容量や航続距離」といった個別機能は、大きな差別化要因とはならない。しかし注目に値するのは、消費者は機能によっては自動運転機能や、遠隔診断と遠隔サービス、EVならではのパフォーマンスチューニングといった新たな付加価値に対し、月々の予算感によっては払う用意があることだという。

付加価値は、自動車メーカーのコアビジネスと、アウトソースにすべきものを、選り分ける分岐ポイントともなる。内燃機関の時代からシフトすべきもの、社内で開発して保持すべきもの、外部パートナーと進めるべきものを、どのように考えているか。他にもサプライヤーが内燃機関ビジネスの規模縮小を余儀なくされる中で、どのような方向性を見出しているか。またディーラーの役割として、販売モデルの変化や充電もしくは発電インフラの実装まで、どのような役割を担うことを、期待され始めているか。

◆電動化シフトへのロードマップとは

鈴木のり子氏が登壇する無料のオンラインセミナー「『CES 2023』テクノロジー・トレンドとモビリティーの未来」は2月16日に開催する。鈴木氏は「サステナブルモビリティの未来:電動化シフトへのロードマップ」をテーマに登壇し、充電インフラ普及の見通しから、グローバル各地域ごとの肌感覚、そして新しいサービスの可能性を、最新のデータ・インテリジェンスに基づいて俯瞰していく。電動化シフトを前に、具体的な業務のアジェンダ化を見通す上で、欠かせないセミナーとなるだろう。

セミナー申込締切は2月15日。詳細・お申込はこちらから。

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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