注目集めるつくばエクスプレス沿線のスマートシティ…つくば市、柏市【MaaSがもたらす都市変革】

なぜつくばエクスプレスにスポットが当たるのか

スーパーシティに指定されたつくば市

国内外から評価を受ける柏市

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鉄道というと、地方では存続問題に発展している路線も多くあることから、いわゆる「オワコン」とみなす人もいるようだ。しかし大都市圏では依然として、新規路線の計画がいくつかある。理由は簡単で、中距離の大量輸送を安全確実に行える交通手段という点で、鉄道に勝るものはないからだ。10両編成の通勤電車(全長200m)の定員は約1500人。全長4.5mの5人乗り乗用車にフル乗車しても300台必要で、1350mもの道路がクルマで埋め尽くされる。

実際には、今の日本の乗用車の平均乗車人員は1.3人ぐらいなので、この4倍近い長さが必要になる。すべての鉄道を自動車に置き換えたら、各地で大渋滞が発生して社会機能がストップするのは明らか。しかも鉄道車両は定員以上の乗車も可能だ。電気自動車や自動運転が一般的になっても、この状況はほぼ変わらない。これからも鉄道のような大量輸送手段は必須なのである。

なぜつくばエクスプレスにスポットが当たるのか

ゆえに東京都では2022年11月、東京駅から勝どきや晴海を経由して東京ビッグサイトに至る通称「臨海地下鉄」構想を、小池百合子都知事が正式に発表した。ちなみにこの路線、単独で完結するものではなく、秋葉原駅と茨城県つくば市のつくば駅を結ぶつくばエクスプレスに乗り入れると噂される。第三セクターの首都圏新都市鉄道が運行するつくばエクスプレスには、茨城県側の延伸計画もある。

今月のニュースでは、県が示していた茨城空港、筑波山、土浦、水戸の4方面案のうち、第三者委員会で土浦案が有力となっているという内容があった。つまり路線の両端で延伸の話がある。注目の路線なのである。ではなぜつくばエクスプレスにスポットが当たるのか。沿線の発展が目覚ましいからだろう。 

2022年1月に総務省が発表した、2021年住民基本台帳人口移動報告では、東京23区が集計開始以降、初めて転出超過となったのに対し、転入超過数の多い市町村ベスト10にはつくば市や千葉県流山市が入っている。統計では、14歳以下、15~64歳、65歳以上という年齢別の順位も示してある。子育て世代が中心となる14歳以下はつくば市が2位で、千葉県柏市がベスト10入りしている。

このランキングには神奈川県藤沢市や相模原市も入っている。新型コロナウイルス感染拡大を契機にした東京脱出は、以前からニュースで取り上げられてきたが、内情を見ると鉄道で東京都心に直結している都市が人気を集めていることがわかる。その象徴がつくばエクスプレス沿線の流山市、柏市、つくば市なのである。

その中から今回は、沿線の中でもスマートシティの取り組みが目立つつくば市と柏市にスポットを当てることにする。

スーパーシティに指定されたつくば市

東京から北東に約50kmの場所にあるつくば市は、人口約25万人で、茨城県では県庁所在地の水戸市に次ぐ、第二の都市になっている。市の北端には観光地として親しまれている筑波山がある。しかし多くの人が今つくば市と聞いてまずイメージするのは、研究学園都市としての顔だろう。

この地に研究学園都市の建設が決まったのは、いまからちょうど60年前の1963年。その後、筑波大学の開校、常磐自動車道の開通、国際科学技術博覧会(つくば万博)の開催などを経て、1987年にこの地域の3町1村が合併し、つくば市が誕生した。並行して走る東日本旅客鉄道(JR東日本)常磐線を補完する路線として、つくばエクスプレスが開通したのは2005年のこと。これにより東京都心の秋葉原駅まで最短45分で到達できることになり、ベッドタウンとしても注目を集めるようになった。


《森口将之》

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