無線アクセスネットワークの新規格「O-RAN」、機器の検証を行う拠点で開所式

Japan OTIC開所式でテープカットの臨む関係者
  • Japan OTIC開所式でテープカットの臨む関係者
  • O-RAN仕様に基づく基地局が導入されることで幅広いベンダーが参入しやすくなる
  • Japan OTICによる効果
  • 異なる基地局を組み込んでも相互に接続できるのでメッシュ状に通信網が完成できる
  • NTTドコモの親局(CU/DU)。異なるベンダーのシステムが組み込まれていた
  • NTTドコモの子局(RU)。富士通やNEC製といった異なるベンダーの基地局を組み込んでも動作することを示していた
  • 楽天モバイルが披露した検証のための検証システム
  • 楽天モバイルの検証用システムの前で説明を受ける国光あやの総務大臣政務官

YRP研究開発推進協会とNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は12月20日、O-RAN(オーラン)に準拠した通信機器の試験や認証を行う拠点「Japan OTIC(ジャパンオーティック)」を横須賀リサーチパーク(神奈川県横須賀市)に開設し、開所式を開催した。

◆複数のキャリアが共同運営する「OTIC」は世界でも例がない

「O-RAN」とは“Open Radio Access Network”を語源とするオープンな無線アクセスネットワークのことだ。5G時代を迎えて、世界の通信はよりオープンで、より確実で、安全なネットワークインフラが求められている。そこで2018年2月、アーキテクチャーの共通化やオープン化が進めるための「O-RANアライアンス」がAT&T、チャイナモバイル、ドイツテレコム、NTTドコモ、オレンジによって設立された。現在は世界の通信事業者32社とメーカー等304社が参加している。

このO-RANアライアンスでは、複数のメーカーの機器を柔軟に組み合わせて基地局の高機能化を目的に、無線アクセスネットワークの相互接続が可能なインターフェースの仕様を定めることを主な活動とする。そのアライアンスが定めたO-RAN仕様に基づいて各種機器の試験を行って認証する機関がOTIC(Open Testing & Integration Centers)となる。今回開設されたJapan OTICは、ヨーロッパ、アメリカ、アジアに続くもので、複数の通信事業者が共同で試験・認証をする拠点を共同で運営するのは世界で初めてのことだという。

OTICが設立された背景には、5Gの基地局を巡って中国など一部大手メーカーの寡占状態だったことへの危機感があった。つまり、これが基地局を設置する上でコストの高止まりを生み出し、さらには供給するベンダーが限定されることによる経済安全保障上の課題も指摘されていたのだ。O-RAN仕様への対応を進めることで、基地局を構成する無線機器などのベンダーの参入が容易になるとされており、それが基地局のよりオープンな競争を可能へとつながって、基地局設備の低コスト化や安定した供給網が維持されることが期待されているのだ。

◆「ビヨンド5Gへ向け662億円の基金を計上して支援」国光総務大臣政務官

開所式にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4者の役員も顔を揃えたが、この時点で検証設備を設置していたのはNTTドコモと楽天モバイルの2社。内覧会では両社が準備した検証設備を見ることができた。KDDIとソフトバンクも準備ができ次第、開設する段取りになっているそうだ。

この日、開所式の来賓として訪れた国光あやの総務大臣政務官は、「総務省としてもビヨンド5Gの実現に向けた研究開発のために、NICT(情報通信研究機構)にその支援する基金として662億円を計上している。Japan OTICが中心となって、よりオープンでより確実な5G移動通信インフラ、さらには(次世代の情報通信インフラとして)“ビヨンド5G”の実現に向けて官民が一丸となっていくことを期待する」と挨拶した。

今回、日本で初めて開設されたJapan OTICの組織運営は、建物を所有するYRP研究開発推進協会が代表となり、そこにNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が会員として加わる形で進められる。この5者は今後、Japan OTICを核として、日本の情報通信分野のサプライチェーンのオープン化、活性化、多様化、海外展開を促進し、よりオープンでより確実・安全な5G通信社会の実現へ向けて貢献していく考えだ。

《会田肇》

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