山線の代替バスはデマンド型も視野に、余市-札幌間には直行便も 北海道新幹線の並行在来線問題

国道上の代替バス路線からルートが外れる形となっている銀山駅。駅から国道へは仁木町営のバスが連絡することが検討される。
  • 国道上の代替バス路線からルートが外れる形となっている銀山駅。駅から国道へは仁木町営のバスが連絡することが検討される。
  • 代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。
  • 函館本線黒松内駅。同駅から蘭越駅まではバス路線を新規に設けることが検討されている。
  • 黒松内~蘭越間の新設バス路線案。
  • ニセコ~倶知安間にある比羅夫駅。駅舎自体が宿になっている話題の駅だが、国道からかなり離れた秘境駅的存在のため、検討の俎上には載っていない模様。
  • 銀山駅からは仁木町営のニキバスが国道上の代替バスに連絡することが検討される。
  • 小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。ここも比羅夫駅や銀山駅同様、国道から離れているが、代替バスは時間帯により経由することが検討されており、駅前にバスの回転場が設けることも考慮されている。
  • 塩谷駅についての検討内容。

北海道は11月9日、北海道新幹線の並行在来線で事実上の廃止が決まっている函館本線長万部~小樽間(通称「山線」)について検討する、北海道新幹線並行在来線対策協議会・第15回後志ブロック会議の内容を公表した。

7月7日に開かれた前回の会議では廃止区間が140km余りの広範囲におよぶことから、長万部~黒松内、黒松内~倶知安、倶知安~余市、余市~小樽の4区間に分け、それぞれの区間における概要が示されたが、11月6日に開かれた今回の会議では「持続可能な公共交通の実現に向けた地域交通の最適化」「地域公共交通計画を踏まえた新たな地域交通網の構築」という方針の下、地域ニーズにきめ細かに対応し、通学や通院といった日常利用に配慮したルートやダイヤ案が提示されており、新たな交通結節点(黒松内・倶知安・余市)の整備、既存路線を活用した運行区間やダイヤの検討、札幌直行便の検討も行なわれている。

代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。

会議で示されたルートはほぼ既存のバス路線に沿っているが、バス路線の空白区間である黒松内~蘭越間は新規に路線を設け、国道から外れる駅については、仁木(にき)町内の銀山駅が町営バスにより国道上のバス路線と連絡すること、小樽市内の塩谷駅が時間帯により既存バス路線が立ち寄るダイヤを組むことが盛り込まれている。同じく国道から外れる倶知安町内の比羅夫駅については言及がなく、検討から外れることがあれば孤立化は避けられないだろう。

函館本線黒松内駅。同駅から蘭越駅まではバス路線を新規に設けることが検討されている。函館本線黒松内駅。同駅から蘭越駅まではバス路線を新規に設けることが検討されている。
黒松内~蘭越間の新設バス路線案。黒松内~蘭越間の新設バス路線案。

導入するバスについては、ノンステップバスや電気バス、リフト付きバスを検討するが、7~10人乗りのジャンボタクシーを使用してのデマンド型交通も視野に入れるとしている。資料に示された沿線の将来推計人口によると、対象となる後志(しりべし)地域は、北海道新幹線が札幌まで延伸する2030年度には2020年度比で2割程度減少。さらに2060年度には2030年度の半分程度にまで落ち込むとされており、予約により効率的な運行を行なうデマンド型交通の検討は、その点も視野に入れてのものと思われる。

銀山駅からは仁木町営のニキバスが国道上の代替バスに連絡することが検討される。銀山駅からは仁木町営のニキバスが国道上の代替バスに連絡することが検討される。

バス転換により、通学や通院などではきめ細かなルート設定で利便性が向上するとされているが、速達性においては道路事情などに左右されない鉄道が有利で、この点がひとつの問題となっている。

小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。ここも比羅夫駅や銀山駅同様、国道から離れているが、代替バスは時間帯により経由することが検討されており、駅前にバスの回転場が設けることも考慮されている。小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。ここも比羅夫駅や銀山駅同様、国道から離れているが、代替バスは時間帯により経由することが検討されており、駅前にバスの回転場が設けることも考慮されている。塩谷駅についての検討内容。塩谷駅についての検討内容。

とくに札幌市へのアクセスが重視されている余市からは、現状、高速バスがJRより30分程度多く時間を要しているが、後志自動車道と札樽自動車道を活用して、小樽中心部を経由しない札幌直行便を設定することで、JRとほぼ同等の1時間5~30分程度、現行より最大で40分程度のスピードアップが見込まれるとされている。

小樽までの鉄道の輸送密度が2000人/日を超え、札幌への直通需要が高い余市町からは、速達性を確保するため、後志・札樽自動車道経由の札幌直行便が検討される。小樽までの鉄道の輸送密度が2000人/日を超え、札幌への直通需要が高い余市町からは、速達性を確保するため、後志・札樽自動車道経由の札幌直行便が検討される。

今回の内容はあくまでたたき台であり、今後は、沿線自治体に持ち帰り住民説明会に諮り、ルートやダイヤについて断続的に協議していくとしており、協議会の幹事会で住民説明会の意見集約などを行なった後、2023年1月以降の後志ブロック会議で検討内容の中間報告を行なう予定となっている。

《佐藤正樹》

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