2021年6月、日本政府は2025年度までを計画期間とする新たな総合物流施策大綱を閣議決定した。それから1年、今後の物流が目指すべき方向性として第一に掲げられた「物流DX」は着実に進みつつある。
その最たる例は、ロボットの活用であろう。日本ロジスティクスシステム協会はロジスティクス推進に向けて優れた実績をあげた企業に「日本ロジスティクス大賞」を授与しているが、2021年に同賞を受賞した取り組みはプラスオートメーションと富士ロジテック・ネクストによる「物流向けRaaSの活用による庫内仕分けシェアリングサービスの実現」であった。ロボットを販売するのではなく、シェアリングサービスとして提供することにより導入時の初期費用を軽減する。ロボットの性能もさることながら提供手段を変えることによって普及を促進したわけだ。
物流DXの進展
現行の総合物流施策大綱が決定してから1年後の2022年6月に開催された第3回関西物流展には、荷物を指定された場所まで搬送するAGV(Automatic Guided Vehicle)、荷物が保管された棚を作業者がいるところまで運ぶGTP(Goods To Person)、作業者との協働で荷物をピッキングするAMR(Autonomous Mobile Robot)、格子状に組まれたグリッド内にあるコンテナを自動で入出庫できるロボットストレージシステムなど、様々な種類のロボットが展示された。日本の企業のみならず、中国のGeekplus、ドイツのSchmalz、フランスのExotec、ノルウェーのAutoStoreといった海外の事業者による出展も数多くあった。物流現場でのロボットの活用は、極一部の先進企業による最先端の取り組みではなく、広く一般に普及しつつあるといって差し支えないだろう。
もちろん、DX(デジタルトランスフォーメーション)は単なるデジタル化ではない。ロボット、AI、IoT、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用したビジネスモデルの革新である。総合物流施策大綱においても、物流DXとは「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」「物流システムの規格化などを通じて物流産業のビジネスモデルそのものを革新すること」と定められている。ロボットをはじめとするデジタル技術を活用すればよいということではなく、物流のビジネスモデルを進化させることで、その国際競争力を高めることが期待されているのである。
(※『物流DXによる産業の革新(前編)』及び『物流DXによる産業の革新(後編)』参照)