JR四国は5月17日、2019年度と2020年度の線区別収支と営業係数を明らかにした。
JR北海道と同様に厳しい経営環境により国からの支援を受けている同社は、地域に対して厳しい経営状況であることに理解を求めつつ、運賃値上げの検討や、持続可能な鉄道網の構築へ向けて、2次交通を含めた「あるべき交通体系」について徹底的な検討を行ないたいとしており、その叩き台として、今回、全線区を対象にコロナ禍前とコロナ禍における収支状況を公表するに至った。
公表内容によると、JR四国全体ではコロナ禍前の2019年度が131億4800万円の赤字だったが、コロナ禍の2020年度は225億7500万円に拡大。100円の収入を得るために要する費用を表す営業係数も155から268に悪化している。
最も営業収益が高い線区は土讃線系統の特急も走る予讃線高松~多度津間だが、その分営業費用も多く、2020年度は23億500万円の大幅赤字となっている。
営業係数では、2019年度に唯一の黒字線区だった本四備讃線児島~宇多津間で本社管理部門の費用などを按分して付加する「共通費」を含む場合で100と最も小さかったが、コロナ禍の2020年度は207と大きく後退。2019年度は共通費を除く営業係数100以下の線区が6つあったが、2020年度は皆無となり、この年度は全線が赤字となっている。
営業係数が最も大きい線区は、輸送密度が四国で最も低い予土線北宇和島~若井間で、2019年度は唯一1000を超えていたが、2020年度は牟岐線阿南~海部間も加わっている。
JR四国で最も輸送密度と営業係数が悪い予土線。輸送密度については、国鉄再建法におけるバス転換基準である4000人未満となっている線区は、2020年度で今回発表の18線区中14線区(このうち2000人未満は7線区)あり、JR西日本芸備線東城~備後落合間のような輸送密度が10人以下で営業係数が2万超えという極端な線区はないものの、今回の発表は四国においても鉄道網の再編をめぐり、地域へ波紋を広げそうだ。