リニア中央新幹線静岡工区有識者会議は12月19日、大井川水系を巡る水資源問題についての中間報告をまとめた。
静岡工区については、大井川上流直下を掘削する南アルプストンネル内で湧水が発生した場合、標高が低い山梨、静岡側へ流出し、それにより大井川水系中下流域への水が減少することが懸念されることから、静岡県は湧水の「全量戻し」ができない限り、着工を認めない方針を崩していない。

これに対して建設主体のJR東海は上流域の椹島(さわらじま)から「導水路トンネル」と呼ばれるトンネルを掘り、湧水を大井川中下流域へ誘導して戻す方法を提案しているが、静岡県は流水量が減少することなどを懸念しており、JR東海との議論は平行線を辿っていた。

そこで2020年4月からは、大井川水系の水資源をめぐる科学的・工学的見地に立った国の有識者会議が公開の形で開かれるようになり、2021年12月までに13回の会議が重ねられた。
13回目でまとめられた中間報告では、トンネル湧水の県外流出について「トンネル湧水量の全量を大井川に戻すことによって、中下流域の河川流量は維持されること」「中下流域の河川流量が維持されることでトンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、河川流量の季節変動や年毎の変動による影響に比べて極めて小さいと推測されること」を確認したとしており、導水路トンネルを利用して湧水を戻すJR東海の手法が事実上、追認される形となった。
とはいえ中間報告では「大井川の水利用をめぐる歴史的な経緯や地域の方々のこれまでの取組みを踏まえ、利水者等の水資源に対する不安や懸念を再認識し、今後、静岡県や流域市町等の地域の方々との双方向のコミュニケーションを十分に行うなど、トンネル工事に伴う水資源利用に関しての地域の不安や懸念が払拭されるよう、真摯な対応を継続すべきである」として、JR東海に対しトンネル湧水のモニタリングの適切な実施や突発的な湧水などに対するリスク管理などを指示している。
これを受けて斉藤鉄夫国土交通大臣は12月21日にJR東海の金子慎社長と面会し、口頭で指導。金子社長も「真摯に対応したい」と述べたという。今後はこの中間報告が静岡県の専門部会に諮られる模様だ。
