低音強化を手軽に行えるのはどれ?…サブウーファーのタイプ名[カーオーディオ用語解説2021]

「パワードサブウーファー」の一例(カロッツェリア・TS-WH1000A)。
  • 「パワードサブウーファー」の一例(カロッツェリア・TS-WH1000A)。
  • 「ボックスサブウーファー」の一例(カロッツェリア・TS-WX2530)。
  • 「ユニットサブウーファー」の一例(フォーカル・E 25 KX)。

カーオーディオで使われる難解な専門用語を分かりやすく説明している当連載。現在は「サブウーファー」に関連した用語に焦点を当てている。前回はまず、「サブウーファー」という言葉自体の意味を説明した。それに引き続き今回は、「タイプ名」について解説していく。

「サブウーファー」を鳴らすには、「ボックス」と「パワーアンプ」が必要!

「サブウーファー」にはタイプ違いがいくつかある。成り立ちの違いで大きく分けると、以下の3つに分類できる。「パワードサブウーファー」「ボックスサブウーファー」「ユニットサブウーファー」、この3つだ。

最初に、「パワードサブウーファー」について説明していこう。「パワードサブウーファー」とはズバリ、サブウーファーユニット、ボックス、パワーアンプ、これら3つが一体化しているタイプの「サブウーファー」だ。“低音強化”を実行するには、この3点が必要となる。それがあらかじめ1度に手に入る。

ところで、ボックスとパワーアンプはそれぞれなぜに必要なのだろうか。まずボックスが必要となる理由は、以下のとおりだ。「スピーカーユニットの裏側から放たれる音を閉じ込めたいから」だ。

というのもスピーカーは、振動板を前後に動かして空気を震わせて音を伝えるのだが、この営みはスピーカーの裏側でも行われている。そして裏側から放たれる音は耳で聴く分には表側の音と同じなのだが、波形としては真逆の関係となっている。表側と裏側とでは、振動板の動き方が真逆だからだ。振動板が前に出たときそれを裏側から見ると引っ込んだ状態となっている。ゆえに、音波の形も逆さまの状態となっているのだ。

で、波形が逆さまの音同士が同一空間で交わると、お互いを打ち消し合う「キャンセリング」と呼ばれている現象が引き起こされる。ボックスは、この現象を防ぐためにあるのだ。裏側から放たれた音をボックス内に閉じ込めれば、「キャンセリング」は起こらない。

「ボックスサブウーファー」の一例(カロッツェリア・TS-WX2530)。

メインユニットに内蔵されているパワーアンプでは、「サブウーファー」は鳴らせない!?

続いては、パワーアンプが必要な理由を解説していく。ちなみに、フロントスピーカーとリアスピーカーを鳴らすには必ずしも外部パワーアンプは必要ない。なぜならば、メインユニットにパワーアンプが内蔵されているからだ。ならば「サブウーファー」も内蔵パワーアンプで鳴らせば良いのでは? と思うかもしれないが、そうはいかない。

というのも、サブウーファーの振動板はある程度大きい。低音を鳴らすには振動板は大きくなければならないからだ。なので、これを動かすには相応のパワーが必要となる。しかしメインユニットに内蔵されているパワーアンプは非力だ。そもそもメインユニットは小さく、その中に入れ込むパワーアンプはさらに小型に成らざるを得ないので、パワー的な限界値が低い。ゆえに「サブウーファー」をドライブするだけのパワーを絞り出せないのだ。これが「サブウーファー」を導入しようとする際に外部パワーアンプが必要となる理由だ。最近ではごく一部、サブウーファーをドライブできるパワーアンプを内蔵したメインユニットも存在しているが、そうではないモデルの方が圧倒的に多い。

というわけで「パワードサブウーファー」には、低音を鳴らすために必要なものがすべて揃っている。なのでこれのみをシステムに加えれば即、音を出せる。このように“低音強化”を気軽に行えるこのことこそが、「パワードサブウーファー」の最大のメリットだ。

ところで「パワードサブウーファー」は、「チューンナップサブウーファー」と呼ばれることもある。この2つの名称は同義語だ。なんら違いはない。

さて、次いでは「ボックスサブウーファー」について説明していく。これはつまり「パワードサブウーファー」からパワーアンプを省いたタイプの製品だ。なおこれは、「コンプリートウーファーボックス」と呼ばれることもある。

「ユニットサブウーファー」の一例(フォーカル・E 25 KX)。

理想のサウンドを追求したいなら、「ユニットサブウーファー」が有利!?

というわけで「ボックスサブウーファー」は外部パワーアンプを別途用意する必要があるので、その意味では導入のハードルは高くなる。しかし、好みの外部パワーアンプを選べることはすなわち利点でもある。パワフルなモデルを組み合わせても良いし、フロントスピーカーを鳴らすパワーアンプとのバランスを考えても良い。このように、最終的なサウンドの方向性をある程度自分の好みで変えられる。ここが楽しみどころとなってくる。

そしてもう1つの「ユニットサブウーファー」とは、外部パワーアンプもボックスも付属していない、サブウーファーユニットが裸の状態で売られているもののことを指す。なおこれは単に「サブウーファー」と呼ばれることも多い。つまりこれこそが「サブウーファー」の代表格、と言って良い。

なお、「ユニットサブウーファー」は導入のハードルがもっとも高い。外部パワーアンプを用意する必要があり、さらにはボックスを調達する必要性も生じるからだ。しかしながら、最終的なサウンドの方向性を自分でプロデュースするという楽しさを思う存分味わえる。どんなパワーアンプを使うか、そしてどのようなボックスを作るかで、仕上がりのサウンドが変わってくる。つまり、理想の低音を追求できる。

とはいえ、「パワードサブウーファー」の中にも本格的な低音を奏でられるモデルは多々あり、さらにはサウンドチューニングを煮詰めることでも鳴り方をコントロールできる。「パワードサブウーファー」がだめということはまったくない。取り付け性やコストを優先したい場合にはやはり、「パワードサブウーファー」が候補の筆頭となってくる。

今回は以上だ。次回も「サブウーファー」に関連した用語の解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

《太田祥三》

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