国土交通グリーンチャレンジ…国土交通省 総合政策局 環境政策課長 松家新治氏[インタビュー]

国土交通グリーンチャレンジ…国土交通省 総合政策局 環境政策課長 松家新治氏[インタビュー]
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2030年までにCO2削減46%を目指して、国内のCO2排出量の約5割を占める運輸・民生(家庭・業務)部門に関する取り組み事項をまとめた6つのプロジェクト「国土交通グリーンチャレンジ」が取りまとめられた。

国土交通グリーンチャレンジの自動車関連分野のプロジェクトについて、国土交通省 総合政策局 環境政策課長の松家新治(まつかしんじ)氏に話を聞いた。

松家氏は8月25日開催の 無料オンラインセミナー「国土交通グリーンチャレンジ~自動車関連分野を中心に~」に登壇して詳説する予定だ。

CO2削減目標の設定について

---:設定されたCO2削減目標について、詳しく教えてください。

松家氏:はい。まず昨年12月に総理から2050年温室効果ガス排出を全体的にゼロにしていきましょうという宣言が出されました。さらに今年の4月、この2050年長期目標に向けて、まず2030年短期目標として、2013年度比で46%の削減が新しく設定されました。

この目標をどう実現するのかというところを、政府としてしっかりと計画を作る必要があります。運輸の分野を含め、産業の分野、あるいは家庭や業務など様々な分野でどのように削減をしていくのか。そしてこの46%という目標をどう実現するのかということについて、地球温暖化対策計画という様々な政策を書いている計画があるのですが、今これらを全面的に見直しています。

今現在どれくらいのCO2が日本全体で排出されているかというと、まず火力発電所で電気を作るためにCO2が出ているのですが、この排出量がでは日本全体の4割くらいとなっています。

また産業分野において鉄鋼を作る際など製造業の過程においてCO2を排出しているのが大体4分の1くらい。あとはいわゆる自動車です。直接車の中で内燃機関としてガソリンやディーゼルを燃やしているのが18%くらいです。

最後は家庭です。灯油や給湯など電気以外の物でCO2を排出しているのが1割。これがエネルギー転換ベースのCO2排出量の内訳です。

つまり、(発電を)火力発電所から再生可能エネルギーや原子力に転換していくような、エネルギー転換の政策と、省エネ。両方でCO2を削減する、というのが大きな戦略になります。

再エネと原子力発電の比率を向上

ではまず発電についてどのように取り組んでいくのかというと、経済産業省がエネルギー基本計画というものを作成しています。現状として火力発電所の比率が高いので、再エネや原子力の比率を高めてCO2を減らそうとしています。また省エネについても計画を作成しているので、この温暖化対策計画とエネルギー基本計画との両輪でCO2削減の取り組みを進めていこうというのが政府の方針になっております。

その中で「カーボンニュートラル」、「グリーンの政策」のどういったところに重点をおくかと、ということについて大きな方針をまとめており、政府全体としては2つのアプローチをしています。

1つは今回のカーボンニュートラルの話です。環境の側面だけで考えるのではなく、経済政策として環境と経済を好循環にすることにより、カーボンニュートラルの新しい社会を作っていこう、というのが大きな方針になっています。カーボンニュートラルを前提とした経済に作り替えていくこと。そのために新しい脱炭素の技術の開発、そしてそれを産業の成長の核に繋げていく。それをグリーン成長戦略と呼んでいます。

もう1つ、日本には様々な地域の自治体があります。そのような地域空間の中で脱炭素化を図っていかないと、いくら国が音頭を取ってもなかなか進みません。その地域の様々な国民生活、あるいは経済活動など、自治体とも連携をしながら地域の脱炭素化を図っていこうと考えています。

具体的な対策として「ゼロカーボンドライブ」と呼ぶこともありますが、電動化などを組み合わせた政策、または住宅建築物の省エネなど、地域の脱炭素に対する政策をそれぞれの地域で広めて全国展開していきましょう、というのが地域の柱になっています。

---:そのなかで国土交通省はどのような役割を果たすのでしょうか。

松家氏:はい。国土交通省が関わるのは自動車運輸の部門、そして家庭と業務部門のところです。それぞれの部門別のCO2排出状況は、2割くらいが運輸の部門であり、そのうちの9割方は自動車から排出されています。さらにそのうち半分強が旅客・人流で出ているもの、半分弱が貨物で出ています。

こうした状況を踏まえながら、ガソリン車をどのように電動化していくのか。あるいは自動車以外の交通機関も活用しながら、どのように排出を抑えていくかというところが運輸の部門では中心です。

このようなデータを整理しながら政府の46%という目標数値、あるいはその先のカーボンニュートラルに向けて取り組んでいく概要として、「国土交通グリーンチャレンジ」をこの春先から有識者を集めて集中的に議論し、この7月に取りまとめました。

2035年にはエンジン車の新車販売終息

松家氏:自動車の電動化については、政府全体の中で自動車の電動化の新しい目標設定をしています。乗用車は2035年までに新しく購入される新車販売の車について、すべて電動車にしてもらうという目標を設定しています。この電動車というのはいわゆるEV、あるいは水素燃料電池自動車、プラスプラグインハイブリッドやハイブリッドを指します。これらを含めたものとして、これで100%にしていきます。

---:2035年には、エンジン車の新車販売が無くなるということですね。

松家氏:商用車やトラック等については、小型の8トン以下のものについては2030年までに、2割から3割ぐらいを新車販売の中で電動車が占めるように、としています。そして2040年には新車全てについて電動車になるように。このあと様々な新しい燃料も開発されてくるということで、イーフューエルなども視野に入れた脱炭素燃料車で合わせて100%にしていきます。

一方で8トン超の大型車については、まだガソリンやディーゼルに代わるような大型のトラック等が開発・普及していないというところから、これからの10年をかけてメーカーなどと連携をしながら、大規模な実証事業の早期導入の取り組み、というのを進めていきます。そして2030年までにはこの分野についても数値の設定をし、2050年までに実際に進めていく、というのが今回の新しい目標になっています。

電動車は高速道路が安くなる

松家氏:これらを実現するために、新車購入時、または既存のものを買い替える際に電動車を選んでもらえるような取り組みを進め、電動車の普及促進をしていきます。これは従来から経済産業省、環境省、国土交通省が連携をしてきました。特に経済産業省は事業用の緑ナンバーのバス、トラック、タクシーのこうした自動車転換に対しての補助や助成を一部しています。またエコカー減税などもやってきています。

さらにこれは今後の検討なのですが、高速道路の料金についてもETC2.0などを活用しながら、電動車についての料金の仕組みというものを考えています。電動車の普及が進むような高速道路利用のインセンティブの対策、というのもこれから検討していきたい取り組みの1つです。

また日本だけではなく世界全体でも、自動運転の技術は社会実装に向けて研究開発実装が進められています。自動運転と電動車の相性がいいということもあり、自動運転の技術を進めるにあたりうまく電動車と組み合わせることにより、電動車の普及促進をどう進めていけるのか、というところですね。

地域の移動サービスのニーズもどんどん変わってきており、特に人口減少や高齢ドライバーの問題が目立ちます。例えば地域の足の確保という意味で、低速で安全安心な運航、そして地域のニーズに合うそんな低速のモビリティサービスも普及の余地があるのではないかということで、グリーンスローモビリティの普及の政策や、超小型モビリティの取り組みによって地域の足の確保、公共交通の様々なサービスの多様性を発展させていく、という政策も効果があるのではないかと思っています。

バス停にEV充電器を設置

松家氏:電動車を普及させていく上で、どうしてもそれを支える充電インフラが大きな課題になってきています。この問題に関しては充電インフラを運営する民間事業者や経済産業省が中心となって支援していますが、国土交通省として出来ることもいろいろあるのではないかと考えています。

例えばバス停にEV充電器を設置すると考えた時に、道路交通に支障のないような形でどのように組み込めるか、ということや、あるいは将来的な技術として、走行中に給電出来るような道路の仕組みをどのように研究開発できるのか、というところも含めて、国土交通省として出来る充電インフラの充実もやっていこうと考えています。

自動車単体の話だけではなく、公共交通や物流の側面からも電動車を選択してもらえるように利便性を高めていくことで、自動車からのCO2を出来るだけ地域の中から削減していく一つの手段になるのではないでしょうか。

物流自体にも人手不足などの課題はありますが、様々なデジタル技術、情報共有の仕組みなども入ってきていますので、荷主や運送事業者、様々な人たちの情報を共有した共同配送の仕組みであるとか、人流だけではない、物流のDXのようなものを組み合わせることでグリーンの政策にも役立ちます。そして効率化をすればそれだけエネルギー消費も減りますし、CO2削減にも繋がります。またはその他ドローン物流など、新しい物流の活用ですね。

以上のようなところを中心に、国土交通省としてはこれから10年重点を置き、さらに2050年、もしくはその先を見据えたイノベーションもやっていこう、というのが大きな方針になっています。

松家氏は8月25日開催の 無料オンラインセミナー「国土交通グリーンチャレンジ~自動車関連分野を中心に~」に登壇して詳説する予定だ。

《会田肇》

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