CES 2021で占う今年の業界展望…日本政策投資銀行 産業調査部 青木崇氏[インタビュー]

自動車業界を含む製造業にとって、CESはその年の技術・マーケティングトレンドを展望する重要なイベントだ。業界大手プレーヤーや注目企業の戦略を自社の事業プランや製品開発に生かす企業は少なくない。

今年のCES2021は、あいにくオンライン開催となった。株式会社イードが主催する1月29日開催のオンラインセミナー「2021年自動車業界展望~CES2021調査報告・ソフトウェア競争戦略~」ではCES2021の最新情報のセッションが予定されている。セミナーに登壇する、日本政策投資銀行 産業調査部の青木氏に、昨年1年の業界動向の振り返りとメディア向け基調講演の最新情報について聞いた。

---:2020年は開催直後にCOVID-19のパンデミックが、業界各社の思惑を狂わせた形となりました。昨年のCESでの各社の発表内容とその後の業界の動きはどうとらえているのでしょうか。

青木氏(以下同):昨年のテーマは大きく3つあったと思っています。ひとつは、「Intelligent of Things」です。LGが提唱した言葉ですが、略語は同じIoTですが、すべてのモノにAIが実装、または関与するというコンセプトです。2019年はモノのインターネットの方のIoTがトピックのひとつで、家電や自動車がインターネットにつながることが当たり前になりました。次の段階として、こんどはこれらにAIが搭載されることが当たり前になるということです。

2つめは環境問題です。環境問題は長年の課題ではありますが、2020年はダイムラーが2039年までに全サプライチェーンでカーボンニュートラルを実現し、水や電力の使用量も削減すると発表しました。また、NTTはIOWN(Innovation Optical Wireless Network)構想を打ち上げました。IOWN構想は、光半導体による通信技術をベースとし、処理速度を向上させ、消費電力を大幅に削減するという特徴があります。

3つめは異分野への挑戦です。ソニーが「Vision S」というCASE車両を発表したり、アマゾンがリヴィアンとデリバリーカーで提携を発表したりしています。ウーブンシティもトヨタが街づくりを始めたと現地でも相当話題になっていました。

---:いま名前が挙がった企業や関連業界において、昨年1年の動きはどう分析されていますか。

COVID-19の影響はありましたが、各社の発表の多くが10年、20年というスパンで見ているものなので、目立った成果や動きは少ないかもしれません。しかし、各社、確実にプランを実現しているように見えます。

ソニーは、Vision Sの発表で自動車業界にインパクトを与えましたが、発表で説明しているとおり、見ているのは完成車ビジネスではありません。居住空間全般のUX、コンテンツビジネスの拡大です。ソニーは、PS5(ゲームプラットフォーム)や映画、アニメにも投資していますが、Vision Sは、センサーテクノロジーのショーケースとしての提案のみならず、CASE車両がこれらの利用空間になっていくことも見据えたものです。センサー技術やAI技術をコアに、9月にはエッジAI(クラウドではなくデバイス・機器側にAIを搭載)とデータソリューションサービスを強化する発表をしています。

2021年に着工するトヨタのウーブンシティは、水素燃料電池によるエネルギーマネジメントの実証実験という意味もあります。昨年末にはe-Palletの実車が発表されました。NTTとの提携ではIOWNの技術がウーブンシティに実装されるでしょう。

---:昨年日本では、新政権がカーボンニュートラル政策を前倒しする形で強化することを表明しました。電動化やカーボンニュートラルの影響はどうでしょうか。

昨年のCESでダイムラーがカーボンニュートラル戦略を発表したときは、あまり目新しいものではないという声がありましたが、その後の各国の脱炭素社会、脱ガソリン車のメッセージをみると、結果的には時代を先取りしていたものでした。ボッシュは今年のテーマに「クライメートフレンドリー」を掲げています。

ウーブンシティでIOWN構想が採り入れられるのも、高速なネットワークに加え低消費電力なコンピューティング・ネットワーキング環境が実現できるからです。DXの背景にあるデジタルツインの世界では、シミュレーション技術が欠かせません。設計や実装前の段階でのモデリングやシミュレーションは膨大なシステムリソースを必要とします。

---:2020年の振り返りを受けて、CES 2021の発表はどうでしたか。

先ほど1日目(メディア向けのセッション)が終わったばかりで、率直な感想を申し上げます。非常に堅実な内容でした。昨年のダイムラーのような近未来感あふれるコンセプト中心の講演は少なく、周知のテクノロジーをいかにビジネスベースで実装するかという講演が多いように感じています。

今までの中では、ボッシュが一番印象的でした。注目度の高いトピックスを幅広く取り上げていました。詳しくは、資料を交えてセミナーでお話ししたいと思います。

ボッシュに限らず、私が注目したのは、昨年3つのテーマとして挙げた、「Intelligent of Things」、「環境問題への対応」、「異分野への挑戦」がどのように変わったかです。まず、AIがあらゆる物に搭載されるという「Intelligent of Things」ですが、これは加速することが確認できました。例えば、Samsungやソニーの講演では、AIとロボティクスが融合するとした発表がありました。AIはあらゆる生活の場面に溶け込んでくると思います。

次に、「環境問題への対応」ですが、世界中で脱炭素が叫ばれている流れがCESでも大きく影響しています。どの企業もカーボンニュートラルやサステナビリティという言葉を使っています。特に、ボッシュが冒頭から「Climate Change」というセンセーショナルな映像で環境問題への対応をアピールしたのは印象的でした。また、Samsungも未来の世代のためにも環境へ配慮した取組みを強化することをアピールしました。

3つ目の「異分野への挑戦」ですが、今のところ驚くようなコンセプトは発表されていません。繰り返しになりますが、コンセプトをいかに実装するか、しかもビジネスベースで、という講演が多いように感じています。モービルアイの講演もいかにレベル4の自動運転を実現するかという地に足の付いた講演内容でした。

CESの主催団体であるCTAが、「CTA's 2021 Tech Trends to Watch」という恒例の今年のテクノロジートレンドを発表しました。「デジタルヘルス」、「DX」、「ロボティクス&ドローン」、「ビークル・テクノロジー」、「5G」、「スマートシティ」の6つが挙げられました。さらに自動車関連で言うと、MaaS、V2X、自動運転車両、電動化が挙げられ、北米市場の大きな割合を占めるトラックの電動化に注目とのコメントがありました。

今日は始まったばかりなので、今後の講演内容もセミナーで詳しくお伝えしたいと思います。

青木氏が登壇する1月29日開催のオンラインセミナー「2021年自動車業界展望~CES2021調査報告・ソフトウェア競争戦略~」はこちら

《中尾真二・青木崇》

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