【2020年ウォッチ】日米の政権交代で加速する脱炭素化、日本も30年半ばすべて電動車

12月19日、次期米大統領のバイデン氏は、気候・エネルギー政策チームを任命した。
  • 12月19日、次期米大統領のバイデン氏は、気候・エネルギー政策チームを任命した。
  • カーボンニュートラルの産業イメージ
  • カーボンニュートラルの広がり
  • 11月5日、中国国際輸入展(上海)に出品されたテスラ
  • テスラ
  • 東京モーターショー2009で、三菱 i-MiEVのハンドルを握って登壇する益子社長(当時)
  • 2005年、デリカD:5の発表会で記者に囲まれる益子社長(当時)

トヨタ自動車を筆頭に新型コロナの感染拡大の影響で悪化した業績は底を打ち、想定以上のペースで改善に向かっている自動車業界だが、回復のスピード感の違いは単なる業績のスコアを越え、将来の成長性に大きな差を生む可能性がある。世界の自動車業界は今日、CASE(コネクティビティ、自動運転、シェアリングエコノミー、電動化)の4分野で同時に変革が進んでおり、それを巡る世界的な研究開発競争が猛スピードで進んでいる。

●次期米大統領のバイデン氏は電動化オシ

そんな中、急激にクローズアップされているのが電気自動車(EV)化のプレッシャーだ。 米国の次期大統領のバイデン氏は、勝利が決定的になった時点で「早期にパリ協定に復帰する」と宣言。自国第一主義を唱えてきたトランプ大統領は科学的な根拠に乏しいとして離脱を決めていたが、バイデン氏は欧州と共同歩調を取ることが確実だ。これは世界最大の自動車市場の中国、2位の米国、そして3位の欧州という世界3大市場がEV化に本腰を上げることを意味する。

そのEV化に遅れていた日本でも、菅義偉首相の誕生で局面が一変、“脱ガソリン車”に向けた機運が一気に高まってきた。就任後の所信表明演説では「2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする」という目標を宣言。先週の12月25日に「グリーン成長戦略」を発表した。具体的には30年代半ばまでに軽自動車を含む乗用車の新車販売のすべてをEVやハイブリッド車(HV)などの電動車に切り替えるほか、商用車については21年夏までに方針を検討するという。しかも東京都などは、政府の目標よりも5年前倒しで30年までにガソリン車の新車販売を認めないという野心的な戦略も明らかにした。

電動化は当面HVが主流になるとみて、EVについてメーカーは日産と三菱自を除き静観を決め込んできた。EVはいつでもできるという電動化のパイオニアならではの余裕で、かつ電動化技術の進歩はゆるやかなものだという現実に即した冷静な判断でもあった。しかし、世界の潮流は技術的な妥当性より政治的な思惑で英国や米カリフォルニア州のように、電動車の中にHV車を規制する動きも出始めている。テスラテスラ

●EVテスラの時価総額がトヨタ自動車超え

そんなEVの今年の象徴的な出来事といえば、イーロン・マスクCEOが率いる米EVメーカーのテスラの時価総額が、トヨタ自動車を超えて世界一になったというニュースには驚いた。テスラの19年の世界新車販売台数は約36万7500台。他方、トヨタグループは約1074万台。テスラは30分の1の規模でしかない。11月にはNY株が初の3万ドルを突破したが、ダウ平均を構成する米国企業の変遷をたどると、米国の産業が、GMなどの製造業が外れ、アップルやマイクロソフトといったIT関連が目立つように、大きく変化してきた歴史がみえてくる。株価は企業規模の大きさではなく、将来性や時代の流れの空気を映し出しており、足元の業績では「ひとり勝ち」のトヨタでもテスラに引き離されたショックは決して少なくない。

最後にショックを隠せないニュースといえば、8月27日、三菱自動車前会長の益子修さんが心不全のため亡くなったのは、あまりにも突然のことでやりきれないほどの残念な知らせであった。2009年、世界初の量産型EV『i-MiEV』(アイミーブ)を先駆けて発表した時には「次の100年で中心的な役割を果たす究極のエコカー」と、自信に満ちたあいさつは忘れられない。それから10年余、再びEVが脚光を浴びるようになったのは偶然とは思えないが、安らかに眠る横浜青葉区の丘陵から、脱炭素社会の実現に向けた新たな挑戦を見守っていることだろう。

2020年ウォッチ
【1】「ゴーン逃亡」で始まり、新型コロナで延期の “五輪イヤー”
【2】コロナで明暗が分かれた決算発表---危機を脱したトヨタ
【3】日米の政権交代で加速する脱炭素化、日本も30年半ばすべて電動車

《福田俊之》

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