モータースポーツを語る上で、日本人としてこの人物の存在を欠かすことはできない。2017年5月、自身8度目の参戦となるモータースポーツ最高峰のレース、インディ500においてアジア人初、日本人初となる優勝を果たした男、佐藤琢磨選手、その人だ。
そのニュースは瞬く間に日本中を駆け巡った。そして3年後の2020年8月。あの歓喜は再び訪れた。自身2度目となるインディ500優勝という快挙である。モータースポーツを知る人ならともかく、そうでない人もこの功績がいかに優れたものかは、連日のニュースで知ることとなったのは記憶に新しいと思う。
彼の小柄な身体から生み出されるレーサーとしてのそのパフォーマンスは、世界の強豪と対等するのに全く持って遜色ないことが証明された瞬間でもあった。“日本人でもあのインディの頂点に立てる”そう思わせてくれたのだ。
インディ500を2回制覇した佐藤琢磨選手の軌跡をまとめた動画が公開中
佐藤琢磨のスターダムへの道
幼い頃に父親と観た日本GPが佐藤琢磨選手のレーサー魂に火を灯すきっかけとなるものの、彼のモータースポーツのキャリアは19歳からだった。
1996年、当時19歳でレーシングカートデビュー。その後、人一倍努力を重ね、感性とテクニックでスカラシップを獲得し、1998年に童夢・無限ホンダより全日本F3へ参戦。さらにイギリスF3挑戦のための渡英を経て、欧州各地で順調に好成績を残すなど、レーサーとしての才能は凄まじい勢いで開花していく。そして2002年、DHL JORDAN HONDAよりついにF1参戦を果たす。以後は成績不振な年はあったもののF1ドライバーとしてのキャリアを着実に歩んでいるように見えた。しかし2008年、所属チームSUPER AGURI FORMULA 1 TEAMの財政難が原因で、彼のF1ドライバーとしての参戦計画は突如として絶たれることとなる。
その後名門チームのドライバーテストに参加するものの、2009年のシーズンドライバー獲得はできなかった。
しかし、そこで終わらないのが佐藤琢磨選手。レーサーとしてのチャレンジスピリットは燃え続けていた。2010年、今の佐藤琢磨選手を生み出すインディカー・シリーズ参戦を決意したのがこの年。挑戦の場をアメリカへと移し、その後はインディレーサーとしていくつかのチームを渡り歩きながらも着々とスターダムへと近づいて行った。
優勝時にGlicoのゴールインマークポーズをする佐藤琢磨選手
佐藤琢磨とGlicoの子どもたちへの想い
実はそんな佐藤琢磨選手をバックアップしている企業の一つにGlicoがある。彼自身が最も大切にしている信念「No attack No chance(挑戦しなければ、チャンスはない)」に共感した同社は、2010年から様々な活動を一緒に取り組んでいる。
なかでも佐藤琢磨選手が立ち上げた東日本大震災の復興支援プロジェクト“With you Japan”の活動の一環であるカートトライアル&スクール「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」のサポートは、2014年以降毎年実施しており、2019年には延べ約1400名がTRIALに挑戦。その内100名をFINAL大会に招待するなど、規模も参加者も年々増幅している。
しかし2020年は、全国のサーキット場にて予選までは行ったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりFINAL大会は断念。代わりに予選上位者100名をオンラインにてドライビングテクニックやレーサーとしての心構えなどを学ぶウェビナー(2020年11月28日予定)に招待し、佐藤琢磨選手とのコミュニケーションを深めることで、少しでも子どもたちの成長に貢献できるよう取り組んでいる。
また、「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」の参加者の中には、将来レーシングドライバーを夢見る子どもたちも少なくない。Glicoは、子どもたちのさらなる成長支援ができないかと考え、佐藤琢磨選手と検討を重ね、2020年よりプロのレーシングドライバーを目指す第一歩のサポートプログラムを始動。その第一弾として、TAKUMA KIDS KART CHALLENGEにて優勝経験もあり、鈴鹿サーキットレーシングスクールのカートプログラムに参加する、瀧口純輝さん(13歳)の活動をサポートしている。
挑戦することの大切さを子どもたちに伝え、子どもたちの成長支援に貢献したい、佐藤琢磨選手とGlicoは、共通の思いを胸に活動を共にしてきたのだ。
TAKUMA KIDS KART CHALLENGEと瀧口純輝さんについて
佐藤琢磨の歩みと想いが凝縮された168秒
さらにGlicoは、今回のインディ500で2度目の優勝を果たしたという偉業を、多くの方に伝えたい想いもあった。2度目の優勝という事実だけでなく、その優勝に至るまでの佐藤琢磨選手の挑戦を続ける姿勢を多くの人に伝えたかった。入念な戦略のもとで達成した2度目の優勝という快挙を通じて夢を持つこと、その実現のために挑戦し続けることの大切さを多くの人たちにも伝えたい。そんなメッセージを託して作られたのが今回ご紹介するこの映像だ。
現在YouTubeで公開されている当映像は、佐藤琢磨選手が幼少期にレーシングの世界に憧れを抱き、レーシングスクールを経てプロのレーシングドライバーとなり、そして今回優勝するまでの軌跡をまとめたもの。冒頭では幼少期とF3時代の本人が映し出されており、あどけなさが残る表情がとても印象的だ。350km /h以上という超高速スピードでオーバルを駆け抜けるシーンは臨場感に溢れ、あの時の興奮が蘇る。激闘の舞台で挑み続け、成長していく姿にも魅せられていく。そして2020年。2回目の優勝シーンを経て、最後は「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」の子ども達と共にGlicoのメッセージで締めくくるという全168秒の構成となっている。
世界最高峰の自動車レースのひとつであるインディ500で2度の優勝を成し遂げた佐藤琢磨選手の軌跡と、世界で戦い続ける一方でGlicoとともに取り組んできた子どもたちの成長支援をぜひチェックしてほしい。
佐藤琢磨からのコメント
この映像に対して佐藤琢磨選手からはこんなコメントが寄せられている。「2017 年に初優勝した際に自然に飛び出したガッツポーズが、たまたまGlicoさんのポーズに非常に似ていたため、 “せっかくだったら完璧なグリコポーズをやってほしい“という声が僕のところにいくつも届きました。その機会を探っていましたので、インディ500のヴィクトリーレーンという最高峰の舞台で、ファンの方との約束が果たせて嬉しかったです。片足を上げての完全なグリコポーズを決めることができました。道頓堀の巨大看板にも再び登場させていただいて、感謝しています。Glicoさんには、東日本大震災直後に立ち上げた復興地応援プロジェクト”With you Japan”にもご支援いただき、「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」に関してはGlicoさんと一緒に活動をしてきていますので、これからも、さらに多くの子どもたちにスポーツの素晴らしさを伝えていきたいです。」
これからも「挑戦することの大切さ」を伝えていきたい
まずは佐藤琢磨選手に心から祝福を送りたい。この感動とチャレンジスピリットの大切さそして日本人としてのモータースポーツへのさらなる可能性を教えてくれたことに感謝と敬意を込めて。モータースポーツは全てのセクションが最高のコンディションで挑むとてもデリケートな世界。高度な技術を持って試行錯誤を行うメカニック、そしてレーサーはコンマ秒数を競う極限の緊張感と、死をも招きかねない一瞬の判断とコントロールテクニックが要求され、常に極度のストレスが心身へと襲いかかる。頭脳と身体感覚に高いセンスが要求され、まさにほんの一握りの人だけが挑める大舞台。一方では彼のこの偉業の道筋をサポートした多くの人たちの姿があったことも事実だ。みんなの「諦めない勇気、挑戦することの大切さ」という団結心が成し得た成果と言える。それはあの瞬時に出た佐藤琢磨選手のゴールインマークポーズが全てを物語っているように感じてならない。
この、人間育成にとって重要な「挑戦することの大切さ」を、我々大人が後世にもっと伝えていかなければならない。それはきっと、このとてつもない現代の競争社会を生き抜いて行くことへの知恵となり希望となるのだから。子どもたちには、佐藤琢磨選手が身をもって証明してくれた「挑戦することの大切さ」をこの機会にぜひ知ってほしい。レスポンス編集部は佐藤琢磨選手、そしてGlicoのこの取り組みを今後も追っていきたい。