NEDOなど、塗布構造吸収器を採用した車載向け小型吸収冷凍機開発…排熱利用で燃費向上

車載向け小型吸収冷凍機
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NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)、アイシン精機、産業技術総合研究所、東京大学は1月23日、世界初となる、塗布構造吸収器を採用した車載向け小型吸収冷凍機を開発したと発表した。

従来の自動車の冷房は圧縮式冷凍機を用いているため、冷房時には走行以外にエンジンでコンプレッサーを作動させる燃料が必要となり、燃費悪化の要因となっている。その一方、エンジン車では燃料の持つ熱エネルギーの約60%が未利用の熱エネルギーとして捨てられており、これをエネルギー源とする吸収冷凍機を用いることができれば年間約12%の燃費向上が期待できる。

一般的な吸収冷凍機は、主に燃料を燃焼させた熱をエネルギー源とし、水を蒸発させたときの気化熱を利用して冷房をする方式で、オフィスビルなどで使われている。吸収冷凍機をエンジン車に用いる場合、必要とされる冷房能力は小さいが、エンジン車の排熱利用と車載可能な条件を考えると、容積を20~40%、重量あたりの冷房能力を130%程度高めなければならず、大幅な小型化と軽量化が必須条件。さらに車両走行時特有の傾斜、振動、高温などへの対応も必要となる。これらの課題が予想されるため、これまで車載吸収冷凍機は実用化が困難だった。

このような背景のもと、NEDOは「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」の中で、2015年から「車両用小型吸収冷凍機の研究開発」 に取り組んでおり、今回、同事業で TherMAT、アイシン精機、産業技術総合研究所、東京大学は、「塗布構造吸収器」と吸収器全体を水蒸気透過膜で覆う「メンブレンラッピングアブソーバー」を世界で初めて採用したエンジン車両向け小型吸収冷凍機を開発した。

開発した冷凍機は、車両の排ガス熱を回収し、冷熱を発生する吸収冷凍機を車両に搭載するために小型・軽量化したほか、塗布構造吸収器やメンブレンラッピングアブソーバーの採用により、走行時の傾斜や揺れなどの影響を防止。これにより、車両環境に対応でき、圧縮式冷凍機からの置き換えにより、エンジン車の冷房運転時の大幅な燃費向上が期待できる。

NEDOでは、2020年1月から、吸収冷凍機を搭載した車両の評価を開始し、商用車の排ガスを利用した車室空調の性能を確認して吸収冷凍機を車両システムに組み込むための課題を抽出。これらを通じて車載吸収冷凍機の実用化を目指す。

《纐纈敏也@DAYS》

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