世界各国のスバルディーラーから選ばれたトップレベルのメカニックたちが日本に集結!…SUBARU世界技術コンクール

SUBARU世界技術コンクール(2019)
  • SUBARU世界技術コンクール(2019)
  • 日本から参加した、栃木スバルの松本拓さん
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SUBARU(スバル)は、整備技能を競う大会「SUBARU世界技術コンクール」を11月に兵庫県で開催した。日本では“スバリスト”と呼ばれる熱心なスバルファンは世界各国に広がっており、世界レベルで見ても顧客からのクルマの性能や品質に対する要求レベルが高まっている。

そんな状況に対応するため、スバルはディーラーのサービス部門の技術力の向上をはかるための様々な取り組みを実施。そのひとつが技術コンクールの頂点に位置する大会で「SUBARU世界技術コンクール」だ。

14カ国から参加、優勝はどこのメカニック?

このコンペディションは、世界各地のスバル正規ディーラーに勤務するメカニックの中から各地域のコンテストで優勝した代表者が参加し、「筆記試験」「計測競技」「実車故障診断」の3つの競技で獲得した合計ポイントで整備技術力を競うというもの。審査委員はスバルアカデミーの整備学校の講師で、競技用に用意されたのは現行型『XV』だ。2005年から2年おきに開催され、今回で7回目となる。参加したのは14カ国で、日本からは栃木スバルの松本拓さんが出場した。中村知美社長をはじめとする役員の面々、そして見学を希望したスバル社員や販売店の社員が見守る中、競技が行われた。

日本やアメリカなど、販売台数の多い国のメカニックが優位と思いきや、そうとも限らない。前回の2017年は宮城スバルの高橋さんが優勝しているが、前々回の2015年はロシア、その前はオーストラリアが優勝するなど、どの国も技術レベルは高く、2019年も優勝を予想するのは難しいとされていた。結果として、2019年は中国のシャン・ドンゴン選手が優勝。2位はスイスのレト・シューマン選手、3位はロシアのバシリィ・ノヴィコフ選手が入賞している。

優勝した中国のシャン・ドンゴン選手は、

「競技前の社内トレーニングから、日本で開催されたSWTC(SUBARU世界技術コンクール)2019競技会までのすべてのプロセスを通して、私は自分の修理技術についての弱点を見つけることが出来ました。それだけではなく、他の参加者との競争から沢山のことを学んだので、自動車修理のスキルに関して多くの知見を得ることが出来ました。講師のトレーニングと、上司であるゼネラルマネージャーに非常に感謝しています。彼らの支援がなければ、今回の私の成功は無かったと思います。

自動車及びその技術が好きで、また持続的な自己学習に対する強いモチベーションを維持できたことが今回の優勝に繋がりました。今回、世界一のスバル整備士の称号を得ましたが、まだまだ多くのことを学ぶ必要があると思っています。これからも自分自身をより良くするために一生懸命努力しなければなりません」とコメント。

素人目に見ても、中国のシャン選手はとにかく動きが速くて正確だったのが印象的で、設問クリアまでの時間も圧倒的に短かった。

スバルとしては「磨いた技術でお客様を笑顔にする」のが狙いであり、ディーラーの来場者を「お待たせしない」「整備の結果にご満足いただく」を最重視しているというから、中国のシャン選手は、まさにその要望に最高レベルで応えられるメカニックとして讃えられたというわけである。

ハイレベルな設問や競技、経験豊富なベテランでも難しいものも

今回は日本やアメリカ、ドイツの選手らは苦戦の様相だったが、それだけレベルの高い競技だったことを証明する結果ともいえた。「計測競技」での設問は、水平対向エンジン(FB20)のヘッド部分の分解と組み立てで、カムシャフトのクリアランスを計測し、基準値を超えている部分を特定し、それを修正。計測と分解、組み立ての手順や正確さによってポイントが加算されたが、技術的にかなり難易度の高いもので、経験豊富なベテランでもこれを30分で行うのは極めて困難だという。

「実車故障診断」の設問も、難解さを極めたものだった。意図的に仕掛けられたエンジンがかからない、かかってもストールする、それらが解消しても警告灯が点灯する、といった車体の電装のトラブルを60分以内に解消することが求められたが、エンジンストールの解消まで至らずにタイムオーバーしてしまった選手も。

競技終了後には答え合わせの解説が行われたが、見学した某ディーラーの整備士によると、いずれも「普通に実施するだけでも難しく、30分や60分で正確に完了させる自信はないが、上位入賞者の技術の高さに感銘を受けた。自分も腕を磨いて彼らに追いつきたい」と語るなど、選手のみならず、この大会を知るすべてのスバルメカニックに及ぼす影響の大きさも実感した。

2017年に優勝した宮城スバルの高橋和也さんは「コンクールに参加して以来、ピット内での乗り降りの段階から、お客様のおクルマを扱う意識がさらに高まり、より一層細やかな気配りを心がけるようになった」と語る。上位入賞者たちは「各車のトラブルコードが頭に入っている」など、知識の習得にかける努力も凄まじいものがあるが、やはり精神的な意識の持ちようも大事なのだ。

ちなみに、スバルは伝統的にモータースポーツ競技の場にディーラーのメカニックを派遣して、レースやラリーでの極限的な状況下での整備経験を積ませることを継続している。ドイツで行われるニュルブルクリンク24時間耐久レースにも毎年日本全国から数名のメカニックを選抜し、現場で学んだ経験を顧客の満足どに繋げる取り組みが続けられているが、2019年に北海道スバルから参加した高橋学希さんは「地域や販売会社を代表して出場した責任と誇りを日々のモチベーションに変えて業務に取り組めるようになりました。レースマシンも市販車も、整備で求められるものは同じで、“より早く、より正確に”を意識することに尽きます」と語った。

《マリオ高野》

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