ローンチ5周年のYahoo!カーナビ、今後の発展[開発担当者インタビュー]

ローンチ後5周年を迎えた「Yahoo!カーナビ」はCarPlayに対応するなど、相次ぎ機能アップを果たしている。三菱エクリプスクロス
  • ローンチ後5周年を迎えた「Yahoo!カーナビ」はCarPlayに対応するなど、相次ぎ機能アップを果たしている。三菱エクリプスクロス
  • インタビューに答えるYahoo!カーナビのサービスマネージャー齋藤聖隆氏
  • 高速道路での分岐点ではイラストを使った分かりやすい案内が展開される
  • ユーザーが実際に走行して取得した交通情報はプローブデータとして破線で表示
  • スマホをタテにすると道路施設のリストアップ表示に切り替わる
  • スマホを横にすると地図と道路施設のリストを同時表示できる
  • ルート探索すると「おすすめ」「高速優先」「一般優先」の3つから選択できる
  • CarPlayに展開しても3ルートを提案されるのは同じだ

Yahoo!カーナビが誕生して、今年7月で5周年を迎えた。これまでに1500万ダウンロード以上と、この手のアプリとしては異例の実績を積み上げた。ここまで人気を獲得できた秘密はどこにあるのか、また今後ヤフー・カーナビはどう発展していくのかを担当者に話を聞いた。

「Yahoo!カーナビが支持される理由は到着予想時刻の正確さ」齋藤氏

インタビューに答えてくれたのは、Yahoo!カーナビのサービスマネージャー齋藤聖隆氏。Yahoo!カーナビを開発当初より全体のとりまとめ担当してきた方である。齋藤氏はYahoo!カーナビについて、「ローンチして5年が経つ現在もApp Storeのナビゲーションランキングで上位に位置している」と人気に陰りがないことを強調。オンラインの環境でのみしか使えないものの、常に最新の地図データを使えるのが強みになっているのは間違いない。

Yahoo!カーナビがローンチしたのは2014年7月31日のことだ。それまで無料で使えるカーナビとしてはグーグルが知られていたが、Yahoo!カーナビは、高速道路でのイラストを使った分岐案内や交差点名の案内などのルートガイド機能で、グーグルを上回るとして支持する声は多い。

中でも、Yahoo!カーナビが人気を呼んでいる理由を、齋藤氏は「目的地への到着時刻がより正確になっていることが大きい」と分析する。ドライブに出掛けた時、誰もが気にするのは目的地への到着時刻だ。休日ともなれば渋滞に遭遇するのは珍しくないし、Yahoo!カーナビの交通情報が導き出す正確な到着時刻はそんな時に役立つというわけだ。

それを実現できている背景には、会員としてログインすればVICSとほぼ同等の交通情報(JARTIC)に加え、会員が実際に走行して取得したプローブデータも交通情報として反映できることがある。さらに駐車場の空き情報やガソリンスタンドの料金といったドライブに必要な情報を案内できるので、特に初めて訪れた場所ではこの機能が大いに役に立つ。

意外に人気が高い機能として齋藤氏が教えてくれたのが、「出発日時や到着日時を指定して目的地までの所要時間を事前に調べられる機能」だ。これも詳細な交通情報があるからこそ可能となったもの。操作は簡単で、“ルート設定”で目的地の下にある日時設定ボタンを押すだけ。これを駆使すれば、電車の乗り換え案内のように、予定する時刻に到着するには何時に出発すればいいかがおおよそ把握できる。ドライブ計画も立てやすくなるのだ。

「安心安全に対する機能アップもYahoo!カーナビの重要なポイント」齋藤氏

最近は安心安全に対する機能アップもYahoo!カーナビの重要なポイントとなっている。齋藤氏は「一時停止や踏切がある場所では音声でその存在を知らせ、小学校などの近所では制限速度30km/h以下で規制されるゾーン30にも対応した」と話し、この機能の搭載は車載カーナビ並み。特にこのゾーン30は知らない人が多く、案内されて初めてその存在に気付き、不思議に思って問い合わせる人も少なくないという。

こうした案内をするにも重要となるのは、規制情報を含めた地図データの更新だ。車載カーナビではリアルタイムで地図更新を行うのは一部に限られる。Yahoo!カーナビはオンラインであることを活かし、常に最新のデータが反映されている。齋藤氏によれば、地図データの更新は頻繁に行っているそうで、「タイミングとしては毎月のように更新は行い、それはルート品質の改善にもつながっている」と話す。特に「重要な新規開通道路は早いタイミング行い、そのメリットをいち早く体感できるようにしている」という。

CarPlay上でYahoo!カーナビの機能がフルに発揮できない理由とは?

ローンチ後5年目を迎えるにあたる今年、最大のトピックとなったのが4月にYahoo!カーナビのiOS版がAppleの車載システム「CarPlay」に対応したことだろう。対応車載機にiPhoneを接続すると、車載機側で直接操作するだけでカーナビ機能が利用できるようになり、まるで車載カーナビのように使えるのだ。齋藤氏によれば、「CarPlayに対応できるようになったiOS 12がリリースされた18年9月以降、利用者からはYahoo!カーナビのCarPlay対応を望む声が多く寄せられており、これが実現の後押しになった」と話す。

ただ、CarPlay上でYahoo!カーナビを使ってみると、iPhone単体で使っていた時との違いがあるのも事実だ。CarPlayでは機能が大幅に限られているのだ。右左折時の音声案内や、履歴/地図上からの目的地設定といった基本機能には対応するものの、目的地のキーワード検索や高速道路の分岐イラスト表示などには対応していない。そこでキーワード検索を行うには音声入力機能を使うことになる。走行中でも入力できるから、これはこれで役に立つわけだが。

この状況について齋藤氏は「CarPlayを利用するに当たってはアップル側の制限が大きい。CarPlayでのUIはイチから設計し直したが、CarPlayにはアプリ上のUIテンプレートが用意されていて、情報表示はその範囲内で対応するしかない」と話す。しかし、Yahoo!ではCarPlay対応時の発表会で、今後検討していることとして「高速道路上などの分岐をイラストでわかりやすく案内」することを挙げており、今後は順次機能追加が行われていくものと思われる。

測位精度についても課題はあると齋藤氏は話す。車載カーナビの多くはGPS情報に加えてジャイロセンサーや車両側から取得した車速パルスを併用しているが、Yahoo!カーナビとしては基本的にはGPSのみで即位している状況にある。齋藤氏によれば使い勝手を向上させるため、「ソフトウェア上でGPSをロストする前の状況を元に、スマホ内のジャイロセンサーから加減速を検知して測位を継続できるアルゴリズムを加えている」という。そのため、トンネルに入っても直ちに自車位置が停止してしまうことはない。しかし、GPSをロストした状態で方角を変更した場合は対応しきれず、ここは車載カーナビに比べて精度は落ちる。

この点について齋藤氏は「車載ナビはコストもかけてある分だけ精度は高い。現状ではアプリとして車速パルスを受け入れらる仕様にはなっておらず、(それを超えるには)何らかの技術革新が必要かも知れない。アップルには車速パルスを使いたいとの意向は伝えてある」と述べた。一方でグーグルの「Android Auto」への対応はどうなのか。齋藤氏は「Yahoo!としては対応したいが、グーグル側でサードパーティー製ナビアプリの利用を開放していない以上、対応することはできない。対応が可能となればYahoo!としても即刻対応できるようにしたい」と答えた。

「タクシーアプリ連携などで機能別に有料課金も想定」齋藤氏

ではYahoo!カーナビは今後どう変化していくのか。齋藤氏はその展開として「マネタイズとしての方法として今後は機能別に有料課金できるようにすることも想定している」と話す。スマートフォンである以上、コネクテッドを活用すべきという基本的な考え方はあるようで、目的地を設定する時、電車やタクシーなどを使った時の案内を選べるようにし、これをタクシーアプリと連携させることで手数料を徴収し収益を上げていくというものだ。これは「カーシェアリングを活用したMaaSとしての利用も視野に入れているが、利用が都会中心となるため、どうアクションすべきか迷っているところ」(齋藤氏)だという。

「駐車場の満空情報を元に予約ができるようにするのも一つの方法で、目的地を設定したら駐車場の予約まで完了できたらいい」(齋藤氏)とも話す。ただ、「駐車場は経営側からすれば回転率重視という考え方もあり、利用者にも駐車場を予約するという習慣が根付いていない」(齋藤氏)。この辺りをどう捉えるかで対応状況は変わってきそうだ。

Yahoo!カーナビでは“運転力診断”にも力を入れる。齋藤氏は「渋滞の原因を特定すると事故がその要因になっていることが多い。運転力を点数化して自分の力量を把握してもらい、自信の力量を知って無理のない運転につなげる。これによって安全運転の啓蒙につながるのではないかと思っている」と話す。Yahoo!カーナビの今後の方向性としては、「コネクテッド、車載器やドラレコなどと、あらゆるものとつながって利便性を高めていくこと。これらが結果として渋滞を減らすことにつながる。安全安心や環境にも配慮した社会的意義の達成を目指していきたい」(齋藤氏)とした。

《会田肇》

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