石垣島で電動スクーターのシェアリングサービスがスタート

モーターサイクル 企業動向
左から前田社長、東会長、中山市長、緒方副部長、高橋社長
  • 左から前田社長、東会長、中山市長、緒方副部長、高橋社長
  • 石垣市役所のバッテリー交換ステーションは駐車場に設置された。会見当日はフォトセッションのためのディスプレイが用意されたが、あいにくの大雨で使用せず
  • 「石垣やいま村」に並ぶ車両。原付1種、2種のどちらも車体外観は共通
  • 大雨のため試乗は中止され、スタッフによるデモ走行が披露された
  • 川平湾のGO STAION
  • 高橋社長みずからバッテリー交換を実演
  • 高橋社長みずからバッテリー交換を実演
  • 石垣港離島ターミナル内にある安栄観光カウンター。上陸者はここで車両貸し出しの手続きをする

「gogoro」の電動スクーターを用いたシェアリングサービスが、石垣市(沖縄県)で2月5日にスタート。これに先立つ1月31日には石垣市役所で、事業主体の石垣市と住友商事をはじめ、関係者による記者会見がおこなわれた。

このサービスはバッテリー交換式という車両の特徴を生かし、石垣島の4カ所に設置された「GO STATION」と呼ばれるステーションで自由にバッテリーを交換できるようにするというもの。

島内の自然環境を保全するためにエコロジカルなモビリティを活用し、同時に災害時の電力供給源としてステーションや車両を使えるようにすることで、環境負荷を低減しつつ観光客や島民の利便性を高めることが狙いだ。

5日から、この「GO SHARE」と名づけられたシェアリング事業を開始したのは、住友商事の100%出資で設立されたe-SHARE石垣。当面は車両100台を運用し、状況を見て増車を検討することにしている。

同社にはアドバイザーとして沖縄ツーリスト、オペレーションのサポートとして取締役、監査役、営業部長を派遣し、事業を前面サポートする。安栄観光が協力。記者会見では具体的な内容が説明された。

会見ではまず、石垣市長の中山義隆氏が挨拶。「このサービスを足がかりに、再生可能エネルギーを活用したEVなどの普及推進が図れるものと期待している。災害に強いまちづくりにも貢献できる」と期待を述べた。また新しい観光ツールとして、観光客の呼び込みにも繋がることを期待しているとのこと。

続いてe-SHARE石垣の高橋良幸 社長は「エコアイランドという単語を切り口に、地域や観光客のみなさま、すべての人たちに愛される会社を目指しています」と挨拶した。

豊富なインバウンド受け入れ実績を持つ沖縄ツーリストの東良和 会長からは、(事業部のひとつである)OTSレンタカーで培ってきたノウハウをe-SHARE石垣に提供すること、そして全国や海外の旅行会社へのアプローチを支援することが説明された。「石垣の観光アクティビティの魅力向上を手始めに、他の離島や沖縄本島、そして全国にもgogoroが普及していけばと考えている」と期待を語っている。

「将来的には、この事業を石垣から沖縄本島、九州に展開することを希望している」と述べるのは、住友商事九州の前田恒明 社長。e-SHARE石垣には取締役をはじめ監査役、営業部長を派遣し、事業を全面サポートすることになっているという。

住友商事モビリティサービス事業部の緒方剛 副部長は、こうしたシェアリング事業を通じて「スマートシティ等の次世代のエネルギーサービス構想の実現を目指し、地球環境の共生、地域と産業の振興に貢献していきたい」と展望を語っている。

それでは、実際のサービス内容はどんなものなのだろうか。現在のところ、おもなユーザーはアジアを中心とした海外から訪れる観光客。クルーズ船から上陸する観光客にはリピーターも多く、そうした人を中心として島内をスクーターで周遊することそのものを楽しんでもらおうというものだ。

現在はまだスマートフォンのアプリを開発中ということで、当面は有人カウンターで車両を借りることになる。島内を自由に周遊し、ステーションでバッテリー交換してもらうという形だ。車両のシェアリング料金は、1時間あたり原付1種モデルが1500円、原付2種モデルが2500円。

島民へのサービス提供はアプリの完成とともに本格スタートとなる予定で、5月の開始を予定している。島民の利用料金は、観光客向けよりもやや低く抑えることも検討しているという。

また、意外な潜在ユーザーも多そうだ。実は石垣島には、周囲の島に暮らす人が置いているスクーターも多い。買い物等で頻繁に石垣島へやってくるため、個人移動手段を自前で確保しているわけだ。こうした需要をシェアリング車両に置き換えることも、環境負荷や駐輪スペースの抑制に繋がると期待できる。

ともあれ、サービスはまだはじまったばかり。まずは認知と利用率の向上を目指すことが重要だが、そのためには乗車体験以外のインセンティブを利用者に与えることも必要だろう。たとえば店鋪特典や、飲食店でのクーポン提供といったことが考えられる。これについて質問すると「まさにその点について、島民たちと話し合いを進めているところです」と緒方副部長。

石垣島を訪れる観光客は年々増加を続けていて、なにも手を打たなければ環境負荷も大きくなるばかり。自然環境を売り物にする石垣島にとって、環境負荷低減に貢献する観光スタイル、生活スタイルは歓迎すべき要因だ。その普及と浸透のために、地元住民はどんな努力をすればよいのか。企業と自治体、それに地元住民のすべてが利益を享受できるビジネスとして成長することを期待したい。

《古庄 速人》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集