ドライバーの顔認識による危険運転予防システムで一歩前進…KDDIと小湊鐵道による低コストなアジャイル開発

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KDDIと小湊鐵道によるIoT活用「路線バス危険運転予防」実証実験 記者説明会
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路線バス乗務員の表情をとらえ、挙動を可視化したい。でも車両設備に大幅な変更はできないし、コストもかけられない。自社の通信ネットワークを更新する予算もない……。

中小のバス事業者などからこんな声があがっているなか、KDDIと小湊鐵道は、バス運転士の表情を顔認識技術でとらえ、危険運転を未然に防止する試験事例を公開した。

両社が共同開発したシステムは、車内に設置したカメラ・ルータ・ラズベリーパイ(ARMプロセッサ搭載シングルボードコンピュータ)と、既存のデジタコを連動させ、運転手の表情や挙動をデータとして統合・可視化していくというもの。

Aピラー部分に貼り付けられたカメラが、運転手の表情を5秒おきに撮影。その画像データは、KDDI回線を通してクラウドにある画像解析サーバーに送られる。

クラウドにある画像解析サーバーでは、運転手のよそ見やあくび、驚いた表情などを解析。その解析結果データにもとづき「感情の急激な変化があった」「落ち着いて運転して」「脇見運転が多い」「眠気があるようだ」といった情報を運行管理者の管理画面に表示する。

また、既存のデジタコと、これら解析データを統合させたデータも運行管理者の管理画面に表示。デジタコの速度変化と運転手表情解析の関連性などを、日時レポートとして表示させる。

アジャイル開発でいち早く更新、初期設備コストも「数千円から」

両社は5月14~31日までの13日間、千葉県内を走る路線バス1台に、前述のカメラ・ルータ・ラズベリーパイを設置し、時速10km以上での顔位置ずれ・下向き・表情変化を計測。

13日間の計測で、顔位置ずれ123件、表情異常121件、顔ずれ+表情異常を46件、合計290件を検知。1日で平均22件も「危ない」と思わせる挙動をとらえた。

両社は12月12日に都内で会見を開き、KDDIビジネスIoT企画部 原田圭悟部長と小湊鐵道バス部 小杉直次長が登壇。この危険運転予防システム実証実験の手応えや展開について伝えた。

今回のアジャイル開発について「2週間毎にスプリントで機能を追加・更新してきた」と話すKDDI原田部長は、小湊鐵道に当初、まったく違うIoT活用を提案していたと伝えた。

「われわれは当初、観光バス乗客の感情分析などを提案したが、システムを開発する前に、売れない商品を開発する無駄な時間とコストを回避すべく、『バス乗務員の挙動を可視化する』と方針変更していった」(原田部長)

中小企業のプロジェクトや課題解決に細かく対応するとき、同社のアジャイル開発を含む「KDDIクラウドCreator」というソリューションパッケージが活かされたと同社はいう。原田部長はさらにこう続けた。

「ラズベリーパイのプログラムは、KDDIで内製している。こうした事例は、大手ベンダーなどに丸投げではなく、KDDIアジャイル開発センターとともに、クライアントの細かなニーズや事情にあわせた、新しいIoT活用展開のひとつ」(原田部長)

「アジャイル開発によって構築した今回のシステムは、カメラ、ルーター、ラズベリーパイの設置だけということで、初期設備額は数千円ですむ。今回の実績をふまえ、中小企業の課題解決などにむけ、アジャイル開発によるKDDIクラウドCreatorを展開していきたい」(同社担当者)

デジタコとクラウド、2つのデータをぶつける醍醐味

また、乗務員指導や教育強化といった課題に直面していた小湊鐵道は、従来のデジタコ日報による指導のほかに、運転手の動機や心理状態をつかむ方法を模索していた。

「そんなとき、KDDIのクラウドCreatorの試験的導入の機会を得て、既存のデジタコと、カメラ・通信・クラウドを組み合わせて乗務員の挙動を計測。運転手の挙動に関する情報を積極的に収集してみた」(小湊鐵道 小杉次長)

KDDIとタッグを組み、「運転手の挙動の可視化」で一歩前進した小湊鐵道は、「ヒヤリ・ハットにつながる可能性のある事例を、早期に発見し乗務員指導を徹底させたい」と意気込む。小杉次長はさらにこう続けた。

「いわゆる対処療法じゃなく、原因療法へと向けていきたい。運転手も『見られている』と認識し、事故を予防するという意識に変わってくる」(小杉次長)

「また、これまでの危険運転予防システムは、乗務員の身体にセンサーを装着するというわずらわしさがあった。このKDDIのシステムは、車両に設置したカメラ・ルーター・コンピューターで計測するため、運転中のストレスも軽減できる」(小杉次長)

……最小限の初期設備でスモールスタートし、方針変更や更新を重ねていくという今回のIoT活用実証実験。KDDIの原田部長は、今回の事例についてキーポイントをこう話していた。

「車両につく既存のデジタコが計測したデーターと、新設のカメラ・ラズベリーパイ・ルーターが送受するクラウドデータを“ぶつけあう”ところが醍醐味。“2つの別のデータ”ではなく、両システムのデータを統合させてフィードバックさせているところが新しい」(原田部長)

《レスポンス編集部》

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