「夢かなった」鈴鹿サーキットを貸切、参加者たった一人の歴代 NSX 試乗会

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ルートKSがたった一人のNSXファンのために鈴鹿サーキットを貸し切っての試乗会を実施した
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  • 夢をかなえた上口氏
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  • 上口氏(左)とカワゲン・コーポレーションジャパン ルートKS 川合進二社長(右)
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ホンダ『NSX』専門店のルートKS(三重県鈴鹿市)は10月17日、一人のNSXファンが歴代NSXを鈴鹿サーキットで走らせるという、一風変わった走行会を行った。

この前代未聞のサーキット走行会は、一人のNSXオーナーの「いつかセナのようにNSXで鈴鹿サーキットを走ってみたい」という夢から始まったもの。セナとは言うまでもなく、レース中の事故で1994年に亡くなったアイルトン・セナのこと。マクラーレン・ホンダ時代の1988年、1990年、1991年にシリーズチャンピオンを獲得して「パワード・バイ・ホンダ」の黄金期を築いた伝説のF1ドライバーだ。

そんなF1人気が日本でピークに達していた1990年、ホンダ初のスーパースポーツとして登場したのがNSXである。セナは当時、開発中のNSXを鈴鹿サーキットで走らせており、その時の様子は今でもネット上の動画で見ることができる。

いつかセナのようにNSXで鈴鹿サーキットを走りたい。そんな夢を抱いたNSXオーナーとは、東京でコンサルティング会社を経営する上口氏。数年前からカートレースやフォーミュラルノーで腕を磨くほか、今年は富士スピードウェイを開催されているシリーズ戦、インタープロトにも出場した根っからのモータースポーツ好きだ。また、本業では地方創生の一環として、島根県江津(ごうつ)市で日本初の市街地カートレースを実現するというプロジェクトを企画し、4年前から支援している。

「その夢、実現しましょう」
上口氏(左)とカワゲン・コーポレーションジャパン ルートKS 川合進二社長(右)
そんな上口氏の夢を聞いて「その夢、実現しましょう」と請け負ったのがルートKSを運営するカワゲン・コーポレーションの川合進二社長。そんな川合社長も「普通のショップだったら絶対こんなことはやりませんね」と話す。「お店のクルマは売り物でもあるし、貴重なクルマを誰かにサーキットで走らせるなんて、いくらお金をもらっても普通ならいやでしょう。でも今回用意したNSXはすべて私個人のもの。また、このお店を始めてから丸14年ですが、私自身はその前からタイプRでサーキットを走っていて、それがすごく楽しかったんです。だから飾っておくだけではなく『走らせるのが好き』『走らせることが大事』という気持ちでやってきました。だから、上口さんの『NSXで鈴鹿を走りたい』という想いと私の想いとがそこで一致したわけなんです」

かくして、話が持ち上がった今年2月からプロジェクトは着々と進行し、ついにこの日、NSXとセナを愛する一人のオーナーの夢がかなうことになった。ルートKSが用意したNSXは計4台。それもただのNSXではなく、新車のようなコンディションの1992年式タイプR(通称92R)、2002年式タイプR(通称02R)、そして1999年式タイプSゼロをベースにルートKSがタイムアタック用に開発したフルカーボンボディの「ゼロフォース」。さらにハイブリッド車として11年ぶりに復活した2017年式の新型NSX(NC1型)も用意された。NSXファンにとってはまさに夢のラインナップだろう。
ルートKSがたった一人のNSXファンのために鈴鹿サーキットを貸し切っての試乗会を実施した
当日の朝は雨だったが、走行が始まる午後には関係者の願いが通じたかのように晴れ間が見え始めた。そして走行開始。制限時間は1時間で、予定周回数は1台につき2周。ちなみに鈴鹿サーキットは1周5.807kmである。

最初に上口氏が乗り込んだのは「タイプR」の原点である92R。エアコンや遮音材を省くなど徹底的に軽量化されたモデルで、車重は標準車より約120kg軽い1230kgを誇る。92Rでの走行を無事終えると、すぐに02Rに乗り換えてピットアウト。02Rはヘッドライトが固定式になった後期型ベースのタイプRだ。

その次に乗ったのがルートKSのゼロフォース。エンジンはほぼノーマルだが、軽量化やサスペンションチューニング、空力性能を究めたモデルで、筑波サーキットなら59秒台、鈴鹿サーキットなら2分20秒台を誇るサーキット専用車である。

そして最後はNC1こと新型NSX。3.5リットルV6ツインターボエンジンを搭載したハイブリッドカーでシステム出力は581ps、駆動法式は電子制御4WDという現代のNSXである。

上口氏の単独走行が終わった後は、スタッフも加わって計4台でランデブー走行。新旧NSXが勢ぞろいで鈴鹿サーキットを水けむりを上げながら走る様子は、まさに壮観だった。

「涙が出そうになりました」
ルートKSがたった一人のNSXファンのために鈴鹿サーキットを貸し切っての試乗会を実施した
すべての走行を終えた後、上口氏は各モデルの印象を語ってくれた。「初代タイプRはまさにNSXの原点とも言える走り。今乗っても楽しくて速い。02Rはもっと洗練されていて、より乗りやすい。ゼロフォースはより軽く、コーナーで車がスッと向きを変えてくれる感覚と、ストレートでの安定感があった。ちょうど慣れたところで走行が終わってしまいましたが、乗りこなせば速いと思います。新型はさすが現代のクルマだけあって速いし安心感がありますね。とにかく楽しかったです」。

しかし今回の走行会は、歴代NSXを乗り比べるのが目的だったわけではない。上口氏は「セナが鈴鹿で優勝して初めてタイトルを獲った時、『スプーンカーブで神を見た』と語ったのは有名な話ですが、私自身は走行中に晴れてきた空を見た時、今回協力してくれた方々への感謝の気持ちがこみあげてきました。私一人では到底実現できないことでも、多くの人が関わって夢を共有できれば実現できるんだと確信しました。」と語った。そして「『夢』は実現して終わるものではなく、『通過点』です。だから夢の実現は、また次の夢の始まりです。今回、一つの夢を実現したことによってまた次の新たな夢へと向かうスタートを切りました。常に夢に向かってチャレンジし続けることが重要なんです。」と晴れやかな表情で締めくくった。

《丹羽圭@DAYS》

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