モーターショーは見るだけではない体験…パリモーターショー代表[インタビュー]

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パリモーターショー2016(ルノー)
  • パリモーターショー2016(ルノー)
  • 東京モーターショー2017(シトロエン)
  • パリモーターショー2018
  • パリモーターショー2018「モンディアル・ドゥ・ラ・モビリテ」
  • パリモーターショー2018「スーパーカー&ラグジャリー・ゾーン」
  • パリモーターショー2018「モンディアル・テック」
  • パリモーターショーのジャン=クロード・ジロ代表

●パリモーターショーは2018年に新しくなる

「止まっている車を見せるだけではダメ。来場者は『経験』を欲しているのです」と語るのは、パリモーターショー代表のジャン=クロード・ジロ氏だ。東京モーターショーを視察に来たジロ代表に現代のモーターショーはどうあるべきかを訪ねた。

「パリモーターショー2018は、コンセプトを一新し、新しい展示会になる」とジロ代表。会期は10月4~14日(プレスデー:10月2~3日)、会場は恒例のポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場が予定されているいっぽう、ロゴが一新され、名称は「モンディアル」(=世界)と新たに定められた。

「パリモーターショー2018は大きく4つのイベントで構成されます」とジロ代表はいう。それら4つのコンテンツは、(1)自動車、(2)二輪車、(3)モンディアル・ドゥ・ラ・モビリテ、(4)モンディアル・テックとなる。

●モビリティとテクノロジーの展示

モーターショーの正式名称が、旧称「モンディアル・ドゥ・ロトモビル」(=自動車の世界)から「オトモビル」(=自動車)を落としたのは、二輪車も展示するようになったからだ。「世界」だけでは何の世界かわからないが、もともと「モンディアル」と通称されていたイベントなので、実際はあまり不自由しないかもしれない。

「車は展示されない」とジロ代表がいうのが、新企画のモンディアル・ドゥ・ラ・モビリテだ。デジタル分野の新しい企業がモビリティ分野に提案するソリューションやサービスを、来場者がインタラクティブなイベントを通じて知ることができる展示コーナーだ。

同じく新企画のモンディアル・テックでは複数のカンファレンスが開催され、未来のイノベーターを発掘する。「大企業とスタートアップR&D企業とを繋ぎたい。フランクフルトモーターショーでもそういった動きが見られた」。

●テストコースで試乗イベント、ヘリコプター送迎

自動車の展示では「スーパーカー&ラグジャリー・ゾーン」に注目だ。関連イベントとして郊外のモルトフォンテーヌのテストコースで試乗会を実施、モーターショー会場との間に送迎のヘリコプターを飛ばす予定だという。

一般の車の試乗や、自動運転の体験は、同じく郊外にあるモンレリーのテストコースで実施する予定だ。コース設定も、パイロンを並べただけの簡易なのものではなく、市街地のセットを組んだリアルにものにする意向だ。EVの公道試乗もパリ市当局と協議中だそうだ。これらの企画の背後にある意図についてジロ代表は「建物の中に商品が並ぶ見本市の、その壁を取り払って、動くものが見えるようにしたい」と説明する。

そしてパリモーターショー2018では、別の展示会であったパリモーターサイクルショー(サロン・ドゥ・ラ・モト)を吸収し、二輪・三輪車に特化したホール「モンディアル・ドゥ・ラ・モト」を創設する。「モーターサイクルショーの入場者は16万人いる。バイクしか乗っていないユーザーは少ないから、モーターショーにも来て欲しい」。

パリモーターショー2018ではデジタルメディアによる情報発信を重視している。たとえばブロガーを起用した“バーチャルビジット”などを検討しているという。また来場者にスマホアプリを配布して、展示のガイドを行なうことも考えている。来場者の行動履歴をデータ化でき、これは出展企業にも便利な資料になるだろう。

●目標入場者数は120万人、回復なるか

2018年エディションの想定入場者数は120万人。前回2016年は107万人だった。2016年は一般公開が14日間だったが、週末が3回あるのは出展企業には負担で、2018年は11日間開催とされたが、目標人数は増えたので、事前のPRにも力が入るわけだ。「バーチャルの来場者をいかに実数につなげるか。新しい企画で若者や女性を呼びたい。止まっているものを見せるだけでは人は来ない。エンターテイメントにしなければ」。

来場者数をさらに前回2014年の125万人(JETROしらべ)と比べると、2016年は14%の減少となっている。これは2015年にテロ事件があったため、フランス国内外、双方からの入場者数が減ったからだ。ただ、この数字はパリ全体の観光客の減少とほぼ同じで、モーターショーだけが減ったわけではない。2017年は中国や日本などアジアからの旅行者の数字が戻っており、モーターショーの来場者数も回復をめざす。

国際モーターショーに“欠席”する大手メーカーが見られるようになったことについては「かつてはモーターショーへの出席は義務だった。しかし今は社会の変化も速ければ企業戦略の変化も速い。製品の展示がブランディングにそぐわない場合もあるだろう。展示したくないという企業には、パリモーターショーでは基調講演やモンディアル・テックといった企画が用意されている。ショー運営者は床面積を売るセールスマンではない。イベントのプロデューサーなのだ」。

それでいうと、東京モーターショーは、車が並ぶだけの旧態依然なモーターショーだ。変化の兆しは少しずつ見えて来てはいるが……。

ジャン=クロード・ジロ(Jean-Claude GIROT)……パリモーターショー代表。クライスラー・ヨーロッパの財務部門からキャリアを始め、フランスのボルボ、ルノートラック、フランスのボルボ・グループで広報ディレクターを経て現職。フランス天然ガス自動車協会の会長、交通産業委員会の委員長も兼任。日本通で剣道7段。

《高木啓》

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