【MX-5カップジャパン 第3戦】いよいよ迎えた決勝レース、ドライバー松田秀士がレポート

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ
決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート
  • 決勝レースをドライバー松田秀士がレポート

6月18日、ツインリンクもてぎを舞台に開催された「グローバルMX-5カップジャパン」第3戦。前回、レース前に行われた1時間のテスト走行をレポートした。そして、いよいよ今回はレースデーのレポートだ。

まず、今回は17日に30分×2回、合計1時間の前日走行があった。前回のテスト走行では55号車という練習用のマシンを使用しての走行だったが、今回はマシンが変わり57号車になる。同一の仕様性能を持つ『MX-5』だが、マシンそのものが別物だ。

セットアップを繰り返し本番に臨む

ところで、前回の走行から感じていたドライビングポジションの改善にあたり、シートを細身のRECARO製に交換してもらった。これは、小柄なボクの場合、シートスライドを目一杯前方にセットするので、シフトレバーを操作するときに腕がシートサイドのサポート部分に当たってしまい、若干操作に影響が出ていたからだ。前回の走行では問題ないと判断していたが、あとで車載映像を確認した際、やはり交換が望ましいと判断したのだ。交換の結果、かなり理想的なポジションにセットすることができた。ボクにとっての理想的なポジションとは、完全に身体をシートに委ねることができ、ステアリングやシフト、そしてペダル操作に余計な力が入らない状態だ。とくに、S字コーナー2つ目などは集中して身体が力みがちだが、力が抜けていれば早くアクセル全開にできるし、リヤが滑っても修正が早く確実にできるものなのだ。

17日、走り初めからあるセットアップを試みた。ここ、もてぎはストップ&ゴーのコース。コーナリングよりもストレートの速度を重視するために、リヤのトーインを0mmにした。これは、キャンバースラストといって、2輪車がバンクしてコーナリングするように、タイヤにキャンバーが付いていると左右の両輪が速度の上昇に伴って互いに押し合う格好となり抵抗を発生。結果、ストレートスピードに影響を及ぼすのだ。そのため、通常リヤタイヤの応答を上げるためについているトーインを0mmと少なくセットし、よりストレートでの抵抗を軽減してトップスピードを伸ばそうという考え。そして、リヤタイヤには4度半というより強いキャンバー角に変更した。

実際に走ってみると、方向性は良いものの想像したほどタイムが伸びない。タイヤは、全開走行した時のモノをそのまま使用している。これまで、タイヤの内圧(空気圧)を低めの方向でサスペンションのセットアップを行ってきたのだが、ここで真反対の高めのセットを試す。結果はかなり良く、このタイヤには高めのセットが合うようだ。

そこで、最後のテスト走行となる2回目は、今度はリヤのキャンバー角を思い切って2度半まで減らしてみた。すると、かなりリヤのグリップレベルが落ち、いたるところでドリフトするような状態になっていた。これはセットアップの失敗。しかしダメ出しができるから失敗が判明する。そうやってセットアップが前へ進むもの。とりあえず、翌日の予選に向けキャンバー角を元に戻し、2回目で確認したダンパーのバンプ(圧縮)&リバンプ(伸び)を強くするセットで予選に挑むこととした。まだハンドリングで悩んでいる部分は、コーナーに進入していくプロセスの中で、ある部分で強くアンダーステアーを発生し、あるコーナーではオーバーステアーを発生する。これによってアクセルを踏み込み加速させるタイミングに遅れが生じタイムロスをしているのだ。この短い時間ですべてを解決するのは不可能。したがって、そこをドライビングで補う必要がある。その補い方にも自分のドライビングの癖が一番生かせる方向にセットをする、というのがボクのやり方だ。これで、翌日の予選・決勝に向けてマシンの基本セットアップを決定した。

苦難の予選、タイヤの使い方がカギ

レース当日は、朝から30分間の予選だ。ここで、今回初めてのニュータイヤを装着する。もちろん、前回のテストデーで初めからニュータイヤだったのだが、初走行ではクルマの特性をまだ理解していないので、ニュータイヤのグリップレベルを生かした走りはできていない。実質的にこの予選でニュータイヤのレベルがわかるというもの。

予選開始となりコースインすると、トップグループの車両は集団を作ってタイヤを温めていた。それは、このMX-5のマシンそのものがスリップストリーミングに強く影響を受けるからだ。つまり、スリップを使うことでタイムが上がる。しかし、ボクはニュータイヤの状態とこれまでのセットアップがマッチするのかしないのかもわからない。まず、単独でアタックすることにした。ピットアウトから1周タイヤを温め、2回目の計測時からアタック開始。

昔、F3000やグループAレースには予選専用タイヤというのがあった。耐久性はないが、1~2周だけ強烈なグリップを発生する。予選用タイヤを使えば2秒以上ラップタイムが縮まる。その代わり、温めてはすぐにアタックを開始しなくてはならず、使い切らなくてはならない。あの頃を思い出しながらアタック開始。今回使用するニュータイヤの良いところは、もちろん全体的なグリップが高いのだが、特にフロントタイヤのグリップと応答性が良い。したがって、高い速度でコーナーに進入でき、少ない舵角で旋回できる。少ない舵角は、まだリヤタイヤが温まりきっていないからだ。ただ、予想より早く荷重が軽いフロントが温まっていた。前半のコーナーを気持ちよくクリア。なかなか良い。後半セクションのヘアピンまでにはリヤタイヤも温まりきるだろうと予想し、ヘアピンでは早めにアクセルON。ヘアピンの後に続く長いストレートの速度を上げるためだ。そこで、リヤトーインを0mmにした効果が最大限生かされる。

しかし、まだリヤタイヤは温まりきってはいなかった。ゆっくりタイヤを温めるつもりはなかったから、内圧(空気圧)も予選だけやや高めでスタートしたのだが、リヤタイヤはまだグリップが最大ではなかった。ヘアピン立ち上がりで、パワースライドし半スピン状態に。何とか立て直したが、今度は反対側にコースアウト。グラベルの砂利を拾い、タイヤを痛めた。ホイール内に入った砂利で振動が出るためピットイン。再度、コースに出てアタックしたが満足のいくタイムは記録できなかった。決勝レースはかなり後方からのスタート。とにかく、じっくり攻めて45分間という限られたレース距離の中で、なんとか追い上げようと心に決める。

いよいよ決勝、果たして結果は?

スタートすると集団の中。第5コーナーまでに2本のストレートがあるのだが、ここで思いのほかスリップストリームが利く。これは、集団の中に居れば面白いレースになると確信。そして、第5コーナーアプローチ、しかし目前で接触事故が発生。これを回避するためにボクはほぼ一時停止状態。ここですべてが決まった。集団に置いて行かれたので、単独で追い上げることに。前に居るマシンとの差を詰めていくが、実質的なラップタイムの差はわずかなものなので手が届くところまではいかない。結果、1位と2位の車両が最終ラップに接触事故を起こし、ボクは4位でフィニッシュ。しかし、1位にペナルティーが科せられたため、繰り上がりの3位になったのだ。自分自身、レースとしては不本意だったが、諦めずにこの位置に居たからこそ取れた3位だった。

グローバルMX-5カップレースの楽しさは、イコールコンディションのマシンのレベルが高いこともさることながら、セットアップに対してマシンが反応することだ。自分のドライビングにあったセットアップが可能だし、ハンドリングで特性をカバーできるノリシロもあるのでドライビングの勉強にもなりスキルアップが可能。また、安全性にはとても気を使っていて、例えば横転時に腕が外に出ないようハンドキープするバンドを使用することも義務付けられている。自分のマシンを購入して、しっかり練習走行とセットアップをしてリベンジしたい、という気持ちを強く持ってしまった。それほど、楽しいし、周りのレベルが高いのでやり甲斐のあるレースだ。

今回、可愛いレースクイーンが4名も付き、YMG1によるカッコいいカラーリングを施してもらい、気持ちよくレースができた。また、メンテナンスを担当していただいたクスコの皆さん、マツダの皆さんにも感謝したい。素晴らしいレースに参加でき、本当に楽しかった。

《松田秀士》

松田秀士

成仏する直前まで元気でクルマを運転できる自分でいたい。「お浄土までぶっ飛ばせ!」をモットーに、スローエイジングという独自の健康法を実践する。これまでにINDY500に4度出場し、ルマンを含む世界4大24時間レース全てに出場経験を持つ。メカニズムにも強く、レースカーのセットアップや一般車の解析などを得意とする。専門誌等への寄稿文は分かりやすさと臨場感を伝えることを心がけている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集