入るだけで綺麗に、石けんいらずの秘境温泉へ【ドライブコース探訪】

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川原の「砂湯」。今や全国でも少なくなりつつある野天風呂だ。
  • 川原の「砂湯」。今や全国でも少なくなりつつある野天風呂だ。
  • 人形峠にて。周辺にはウラン採掘の残土が放置されている場所が複数あり、公には認められていないが結構な高線量を発する区域もあるという。
  • 人形峠から湯原温泉に向かう。
  • 夕暮れの湯原温泉。
  • 長寿の湯。泉質はアルカリで、無色透明。
  • 美人の湯。長寿の湯より若干ぬるい。
  • 旅館の光を水面に映す美人の湯。
  • 温泉評論家、野口冬人氏による番付。湯原温泉は西の横綱。ただし、鹿児島の温泉が離島ばっかりなのは鹿児島人としてはいささか納得しかねたのもたしかである。

岡山北西部の山間部に湯原温泉という古い温泉郷がある。先頃、ホンダのサブコンパクトクラスのミニバン『フリードハイブリッド』で東京~鹿児島間を3800kmほどツーリングしたさいに立ち寄ってみた。昨年暮れに同地を訪れたときは強い雪が降ったため内湯に入った。今回はそのリベンジである。

湯原温泉は昔は堂々たる秘境温泉であったのだが、四半世紀前に米子自動車道が開通し、近隣に湯原インターチェンジができ、周辺の国道も大改良されたため、今日では簡単にアクセスすることができる。が、筆者の今回のアプローチルートは高速ではなく、かつて日本唯一のウラニウム鉱山があったことで知られる人形峠方面から。

湯原温泉にはさまざまな温泉がある。高級旅館からリーズナブルな宿まで、多くの旅館が日帰り入浴を受け付けているほか、下湯原のほうには施設が整備された公共露天風呂もある。が、お目当ては何と言っても川原に湧出する野天風呂「砂湯」だ。24時間入浴可能、料金無料、目張り一切なしという野生派の風呂だ。

日が暮れようとしている時間帯に砂湯に到着した…何と驚くことに、昔は単に棚があるだけだった脱衣所が、ちゃんと男女別になっている。しかも、はるか昔に訪れたときはタオルを持って湯に向かうのはダメといった、なかなかすごいローカルルールがあったのだが、いつ変わったのか、今日ではタオルで前を隠したり水着を着用したりして、周りに迷惑をかけないようにしましょうという、真逆の決まりごとが書かれていた。念のためバスタオルだけでなく手ぬぐいも持っていってよかった!!

そういうルール大変更はあったが、地元の人たちは昔のように超おおらかなスタイルで入っている。日が暮れて星が見え始めるくらいの暗さになれば、もう恥ずかしいも恥ずかしくないもない。もっとも、女性用脱衣所には、持ち物を置く棚の奥にちゃんと外から見えないように水着を着たりバスタオルを巻いたりできるスペースが用意されていて、女性にとっても昔のようなハードルの高さはもはやないと言える。暗くなればなおのことで、ご近所さん同士が男女問わず、お湯に浸かりながら談笑していた。

湯原温泉の砂湯の泉質はアルカリ泉。ピーリング効果があるため、石けんがなくても勝手に体が綺麗になるという素晴らしさだ。地元住民のひとりいわく「もう30年くらい、風呂で石けんなんか使ったことがない。お湯を浴びるだけで本当に綺麗になるんだよ」。実際に洗面器で頭からお湯をかぶり、ゆっくりお湯に浸かってみたら、それだけでつるつるになり、汗臭さも取れる。素晴らしいお湯であった。

ちなみに砂湯は「長寿の湯」「美人の湯」「子宝の湯」の3つがあり、このなかでは長寿の湯が最も温度が高い。筆者が訪れた4月下旬はまだ気温が低めだったこともあって適温であったが、夏は結構熱くなるという。美人の湯、子宝の湯はそれに比べるとぬるめ。こちらは熱い湯が苦手な人でも夏もOKといったところだろう。

温泉街を丸ごとリニューアルして客を集める温泉地も多いなか、湯原温泉は昔ながらの風情を今も残している。スナックや料理屋の看板などは、昭和マニアなら涙モノというものも多い。興味のある向きには中国山地ドライブのおりにぜひ立ち寄ってみることをおススメしたい。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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