スバルを磨く、個性を見つけるとは---吉永社長が講演「シビれる会社なんですよ!」

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スバルの吉永社長(5月30日、アドバタイジングウィーク・アジア)
  • スバルの吉永社長(5月30日、アドバタイジングウィーク・アジア)
  • スバルの前身、中島飛行機の一式戦闘機一型「隼」。2015年カレンダー
  • スバル360
  • スバルBRZ
  • スバルBRZに搭載される水平対向エンジン
  • アイサイトによる障害物の認識イメージ
  • アドバタイジングウィーク・アジア
  • アドバタイジングウィーク・アジア
東京都内で開催されている、マーケティングに関するフォーラム「第2回アドバタイジングウィーク・アジア」の基調講演に30日、SUBARU(スバル)の吉永泰之氏代表取締役社長が登壇し、「個性を活かして生きる」をテーマに講演した。

●スバルは飛行機屋

吉永社長は「我々は何者か。それを確立するためにここ数年間戦ってきました」と語り始めた。スバルとはなんぞや、というと、創業の飛行機製造会社であることに帰結するという。

スバルとは何者か……
1. ものごとの考え方や突き詰め方、思考回路が飛行機屋
2. したがって技術オリエンテッド
3. したがって高コスト体制

「これらがスバルの個性。たとえばコストが勝敗の要因になる局面では厳しい競争を強いられますが、長所と短所は裏表の関係です」

続いて最近のスバルの実績と世界市場の動向を吉永社長は解説する。「8年間でスバルの世界販売台数が倍になりました。ずっと60万台がいいところだったのが、2016年には100万台を超えました。グローバルで見ると自動車は成長産業で、2004年は6000万台、2015年は9000万台、2018~20年には1億台に達するのではないでしょうか」。

「世界の地域では中国、アジア、中南米で伸びています。人気の車種は、そういった新興国で人々が乗るコンパクトカーです。大手メーカーは新興国の各地で現地生産をして、世界生産1000万台規模で競争しています」

スバルの前身、中島飛行機の一式戦闘機一型「隼」。2015年カレンダー
●シェア1%のメーカーにできること

講演後の取材で吉永社長は「2009年に『レガシィ』の車幅を広げたところアメリカで売れ出しました。そこから、スバルとはなんぞや、と考えるようになった」と明かす。

ステージの吉永社長はスバルの課題をあげる。「100万台を超えたと言っても、スバルの世界シェアは2015年で1%に過ぎません。経営資源は限られています。1000万台メーカーを相手にするような、量が勝敗を決する戦いはできません。このことについては社長になる前から社内に議論をふっかけていました。何が個性か、強みはあるのか、と」。

スバルに何ができるのか。「会社は60年間潰れていません。だから、スバルのここがいいよね、とお客さんが言ってくれるものがあるはず」。そこでスバルがとったのが次の戦略。

1. 選択と集中
2. 差別化
3. 付加価値

スバル360
「まず事業を集中しました。スバルは産業機械や汎用エンジンなど複数の事業をやっていましたが、自動車と航空宇宙に集中しました。飛行機は最先端の産業なので、日本でやるべき。国内に残しておかなければなりません」

「車種も選択しました。スバルの最初の自動車は『360』という軽自動車ですが、軽自動車は他社からのOEMに切り替えました。スバルの開発リソースだとモデルチェンジサイクルがどうしても長くなり、商品力を保てない。それに軽自動車はスバルにとって分の悪いコスト競争商品であり、さらに市場は国内に限られています。一定の台数はコンスタントに売れていましたが、やめました」

いっぽうでスバルは『BRZ』という新型スポーツカーをリリースした。「スバルがもっている水平対向エンジンでいいスポーツカーできるのはわかっていました。ですがスバル1社でスポーツカーはできません。台数が売れる車ではないですから。そこでトヨタ自動車と手を組みました」。

スバルBRZに搭載される水平対向エンジン
●当たり前の安全性が企業姿勢

自動車という商品にはいろいろな要素や性質がある。スバルは自動車の中のどこで戦うか。「技術の集中も必要でした。車種の集中は会社の都合であって、お客さんには関係ないことです。お客様にどんな技術を提供できるのか。それが飛行機会社に由来する『安全』なのです」。

ただここで「スバルの個性は何か。社内の技術陣にはわからない。なぜなら当たり前のことだから」と、吉永社長は次のようなエピソードを披露した。

「2010年にアイサイトがヒットしたのですが、それまでも売っていましたし、研究も20年間続けていたのです。アイサイトがヒットする前に技術者に聞いたんです、『なぜ20年もやっているの? サラリーマン生活、日の目を見ない仕事なのに』と。そうしたら『事故を減らしたい。自動車会社として当たり前のことです』と答えるのです。痺れますね。スバルはそういう会社なんですよ!」

アイサイトによる障害物の認識イメージ
「その頃、スバルの全車種が衝突安全基準で『トップセイフティ』を獲得しました。これは企業姿勢だね、とアメリカ市場で評価された。技術者にとっては当たり前なので個性だとは気がつかなかった。そこで、ここを膨らませることにしました」

●数の論理、技術の競争、ブランドの差別化

技術を訴求するとしても、技術だけだと競争相手にいつかは追いつかれる。ブランド力にならない。どう差別化するか。

「スバルのアメリカ法人発ですが『Love』がキーワードです。スバルをスバルたらしめるのは愛。車を価格で買ってもらうのではない。値引きをやめました。値引きの原資になる販売店へのインセンティブ(報奨金)が、アメリカの平均で1台3500ドルぐらいでしょうか。当社は1000ドルです。値引き競争から退いたいっぽうで、下取りのバリューは一番高いです」

「差別化では、作り手の独りよがりの差別化になっていないか、お客様から見た差別化ができているか、注意が必要です」と吉永社長。日本でのキャッチフレーズは「クルマは人生を乗せるものだから。」となった。

今後、スバルは何をめざすのか。吉永社長は今までの戦略をまとめて「差別化。際立つこと。ブランドを磨こう、と。会社の名前もSUBARUに変えた。全国の新聞に全面広告2ページ続きを掲載して社名変更を告知したのも決意表明です」。

「広告のコピーは『モノをつくる会社から、笑顔をつくる会社へ』ですが、実は後半は掲載直前まで『価値を届ける会社へ』だったのです。ところが社員の一人が、まだお客様の立場になっていない、と。届けた時、お客様はどうなるか。笑顔になる、ということでこのコピーになりました」
《高木啓》

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